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(3)薬剤性肺障害の画像・鑑別診断を究める [特集:新規薬剤が引き起こす薬剤性肺障害]

No.4743 (2015年03月21日発行) P.31

酒井文和 (埼玉医科大学国際医療センター画像診断科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-09

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  • 新規薬剤とはいえ,画像所見は従来の薬剤による肺障害の画像と異なるところはない

    薬剤性肺障害の画像診断所見のみによる鑑別は困難なことが多く,臨床所見や検査所見などと総合して判断すべきである

    薬剤性肺障害の診断における最も重要な役割はDAD型肺障害の診断と,被疑薬投与前の画像における慢性間質性肺炎の有無の判断にある

    1. 特異な臨床所見を呈する薬剤性肺障害もみられる

    薬剤性肺障害は,基本的にはどのような薬剤にも発生しうる事象であるが,ゲフィチニブ(イレッサ1397904493)による重症肺障害の多発以降,薬剤性肺障害が医療界や社会の注目を浴びるようになった。その後,分子標的治療薬が各領域で次々に開発され,臨床応用されるようになった。その一部には比較的特異な臨床所見を呈する薬剤もみられる。
    本稿では,最近の新規薬剤を中心に,薬剤性肺障害の画像診断,画像による鑑別診断の要点を述べる。

    2. 薬剤性肺障害の臨床1)2)

    新規薬剤ばかりでなく,すべての薬剤に肺障害を生じる可能性があるため,薬剤投与中に呼吸器症状や胸部画像での異常所見をみた場合は,常に薬剤性肺障害の可能性を考慮しておく必要がある。
    臨床症状は非特異的であり,乾性咳嗽,発熱,呼吸困難などである。検査所見も特異的なものはないが,CRPの上昇などの炎症マーカーの上昇やKL-6, SPA(surfactant protein-A)の上昇など間質性肺疾患を示唆する結果が得られる。感染症に関する各種マーカーや培養結果は感染症を除外するのに有用である。
    薬剤性肺障害の臨床診断で最も問題となるのは,信頼に足る的確な非侵襲的臨床検査法がない点である。薬剤性肺障害の診断基準はいくつかあるが,その要点は,①被疑薬投与後に発症していること,②被疑薬中止後改善すること,③被疑薬再投与により症状が悪化すること,④被疑薬による同一臨床病型の薬剤性肺障害の症例報告(文献記載)があること,⑤原疾患の進行や感染症など類似の症状,所見を呈する他疾患が否定されること,などである。すなわち,現時点で薬剤性肺障害は除外診断であり,そのほかの疾患を否定することが最も重要である。
    被疑薬と患者リンパ球を混合培養し,トリチウムチミジン(3H-thymidine)の取り込みの増加を測定する薬剤リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test:DLST)は,30%以上の偽陽性,偽陰性があるとされ,信頼に足る検査ではない。また,現時点で最も信頼できるとされるチャレンジテスト(少量の被疑薬を投与し,症状や検査所見の悪化をチェックする)は,重症肺障害の場合は施行できず,また倫理上や医療安全上の問題から行えないことも多い。
    上記の理由により,薬剤性肺障害では,その診断レベルは臨床診断レベルにとどまり,診断確度がさほど高くないものも含まれる可能性があるため,過去の文献報告などをチェックする際には慎重に見ることが求められる。

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