2016年にPCSK9モノクローナル抗体製剤が上市された。PCSK9は主に肝臓から血中に分泌され,LDL受容体と結合し,分解する。PCSK9の機能獲得型変異では,肝臓のLDL受容体発現は低下し,血中LDLの取り込みが抑制されるため,常染色体優性遺伝性高コレステロール血症の原因となる1)。逆にPCSK9の機能喪失型変異では,LDL受容体発現は増加し,血中LDLの取り込みが促進されるため,血中LDLは低値となり心血管疾患の発生率が低いことが報告されている2)。そのためPCSK9を阻害する薬剤が,スタチン投与後の心血管疾患の残余リスクを逓減する薬剤として期待され,開発されてきた。
PCSK9モノクローナル抗体製剤は,生活習慣の改善およびスタチンを最大耐用量まで使用してもコントロールが不十分な家族性高コレステロール血症,または,心血管イベントの発現リスクが高い高コレステロール血症が適応である。原則として2週に1回の皮下注射で,エボロクマブ,アリロクマブの2剤が上市されている。LDLの低下効果は顕著であり,60~70%低下する。
今後,大規模臨床試験で,心血管疾患発症抑制のエビデンスや,長期的安全性が明らかになることが期待される。
【文献】
1) Abifadel M, et al:Nat Genet. 2003;34(2):154-6.
2) Cohen JC, et al:N Engl J Med. 2006;354(12): 1264-72.
【解説】
髙橋 学 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学病院講師