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製薬業界における医療界への情報共有のあり方について【OPINION】

No.4860 (2017年06月17日発行) P.20

宮川政昭 (神奈川県内科医学会会長)

登録日: 2017-06-19

最終更新日: 2017-06-14

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  • 最近、各地で講演会の開催が困窮をきたす状況となった。製薬業界が定めた自主規制が過剰となり、明らかに行き過ぎと思われる規制が見受けられる。

    最適な診療の選択のためには、治療法の検討が必要であり、薬剤の適正使用を視野に入れた医療情報の提供が望まれる。病を治すため、人類のあらゆる分野における知識や経験を集大成した医療講演会を望むのは、夢物語と一蹴されてしまうだろうか。講演会、研究会、さらに市民公開講座の実施に当たり、どのような問題点が潜んでいるのであろうか。

    さて、製薬業界は医療界に入らないのだろうか。製薬業界は、研究者、医療関係者、患者団体等との相互の信頼関係の中で、最適な医療が推進されるよう行動することが望まれる。最近の動向をみる限り、社会の信頼に応えていくため、あらゆる立場の人たちと対話するという視点が抜け落ちている。

    製薬企業が自らの業界のみで議論するのではなく、医療者と共に講演会や研究会、そして臨床研究のあり方を考える時が来ているのではないだろうか。

    規制適正化と講演会について

    近年、医薬品のプロモーションに関する規制が強化されつつある。かつては製薬企業の医師に対する行き過ぎた営業活動があったことは事実であり、その適正化は必要である。懇親のみを目的とした接待の廃止などは国際的な潮流でもあり妥当といえる。しかし医薬品情報の提供を巡っては、製薬業界が定めた自主規制が過剰となり、そのことが各製薬企業の萎縮を招き、必要な情報まで医師に届かなくなっている。振り子の針が、かつての野放図な状態への反動から厳しい方向に触れ過ぎてしまった状態であり、明らかに行き過ぎと思われる規制が見受けられる。これを見直し、実地医家の意見も取り入れながら、適正な規制へと見直しを図るべきである。

    そこでは「広告」と「情報」を混同しているが、両者の規制は分けて考えるべきであろう。広告という情報を自社の営業の主流に置き、偏向した解釈を提示していたのは、製薬企業自体である。さらに薬剤情報と医療情報を混同している。実地診療における両者の差をわきまえて取り扱うべきであろう。講演会は単なる薬剤情報の伝達会ではない。人を診るという、医療におけるさまざまな事象を明らかにし、検討する場である。一見不都合と思える臨床上の出来事を、多様性の中でどのように的確に取り扱うことができるか。適正な医療情報なしに、適正な薬剤使用は存在しない。

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