米国サンディエゴで6月9日から開催されていた米国糖尿病学会の最終日に、2型糖尿病(DM)例におけるSGLT2阻害薬の心血管系イベント抑制作用をプラセボと比較したランダム化試験“CANVAS Program”が報告された。
その結果、SGLT2阻害薬群では、一次評価項目である「心血管系死亡・心筋梗塞・脳卒中」が、プラセボ群に比べ有意に減少していた(ハザード比 [HR] :0.86、95%信頼区間 [CI]:0.75-0.97)。これは2015年に報告されたランダム化試験“EMPA-REG Outcome”と同様である。一方、EMPA-REG Outcomeで観察された脳卒中の増加傾向は、CANVAS Programでは認められなかった(HR:0.87、95%CI:0.69–1.09)。また一次評価項目ではないが「心不全入院」がSGLT2阻害薬群で著明に減少した点も、EMPA-REG Outcomeと同様である(HR:0.67、95%CI:0.52–0.87)。
一方、有害事象として看過できないのが、「下肢切断」だ。プラセボ群における発現率、3.4例/1000例・年に対し、SGLT2阻害薬群では6.3例/1000例・年と、有意なリスク上昇を認めた(HR:1.97、95%CI:1.41-2.75)。また骨折も、EMPA-REG Outcomeと異なり、SGLT2阻害薬群で有意に高値となっていた。
今回報告されたCANVAS Programは、2つのランダム化試験“CANVAS”と“CANVAS-R”を併合した解析である。心血管系イベント高リスクの2型糖尿病10142例がSGLT2阻害薬カナグリフロジン群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法にて平均4年弱追跡された。
当初、心血管系イベントへの影響はCANVASのみで検討される予定だった。現在登録されている4330例で心血管系安全性が確認されれば、14000例が追加登録されることになっていたという [Neal B,et al:Am Heart J.2013;166(2):217-23]。しかし試験開始から3年経った2012年11月、独立データモニタリング委員会が途中解析を行い、追加登録は中止となる。その代替として、2013年に始まったのがCANVAS-Rだとのことである [Neal B,et al:Diabetes Obes Metab.2017 Feb 28.doi:10.1111/dom.12924] 。同時に2013年、CANVASとCANVAS-Rを併合解析する計画がClinicalTrials.govで公表される。CANVAS-Rの評価項目は当初、腎機能に限られていたが、2016年11月、2次評価項目に「心血管系死亡・心不全入院」が加えられた。CANVASとCANVAS-R併合解析のプロトコールが公表されたのは、2017年3月である[前出Neal B,et al]。なお、CANVASのみで解析すると、SGLT2阻害薬群の「心血管系死亡・心筋梗塞・脳卒中」のHRは0.88(95%CI:0.75–1.03)であり、プラセボ群と有意差を認めない(ただし非劣性)。
ADAにおける本試験の報告者はジョージ国際保健研究所(豪州)のBruce Neal氏。NEJM誌にも同氏らによる論文が同日掲載された。また本試験への資金提供者は、ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメントである。