大腸癌で抗EGFR抗体薬,抗VEGF抗体薬を上手に使いわけると,OS改善につながる
胃癌においてもトラスツズマブ,ラムシルマブが導入されてきた
バイオマーカーによる個別化で,より適切な治療が選択される
切除不能と判断された転移・再発大腸癌の予後は約8カ月であり,現状では治癒させることはできないが,PS0~2の症例を対象とした第3相試験において,抗癌剤を用いない対症療法と比較し,化学療法群に生存期間の有意な延長が検証されており,現在の化学療法の生存期間中央値は30カ月に到達している(表1)1)〜3)。化学療法の目標は腫瘍増大を遅延させて症状コントロールを行うことであるが,症例によっては切除可能となり,長期生存が得られる場合があるため,切除可能性を念頭に置いた対応が必要となる。また,三次,四次治療,それ以降も念頭に置いた治療が可能になった。
大腸癌の化学療法の問題は,抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬のどちらが,より生存期間延長に寄与するかであった。2013~14年にかけて抗VEGF抗体薬ベバシズマブ(アバスチン1397904493),抗EGFR抗体薬セツキシマブ(アービタックス1397904493)およびパニツムマブ(ベクティビックス1397904493)の有効性や安全性を直接比較した結果が報告されてきており,現時点で明確にどちらが良いというエビデンスとはなりえないが,今後使いわけの方針が明らかになることが期待される。その3つの試験を紹介する。
ドイツのAIOグループが行った,世界初のセツキシマブとベバシズマブを直接比較した第3相試験である。KRAS codon12, 13野生型においてFOLFIRI〔フルオロウラシル(5-FU)+ℓ-ロイコボリン(LV)+イリノテカン(CPT-11)〕+セツキシマブ群がFOL FIRI+ベバシズマブ群に対して全生存期間(OS)の中央値で3.7カ月の差を出して有意な延長を示した。KRASのcodon12, 13以外の変異や,同じRASファミリーであるNRASの変異を除くこと(RAS野生型)で,より効果が期待できる対象群が絞り込めることが期待され,RAS野生型においてFOLFIRI+セツキシマブ群がFOLFIRI+ベバシズマブ群に対しOSのハザード比(HR)0.7,中央値で7.5カ月の差を出し,OSの改善傾向を示す結果となった。しかしながら,この試験は主要評価項目が主治医判定による奏効率で,これは両群に有意差が認められなかったため,試験の結果の解釈を難しくしている。
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