(兵庫県 K)
胃底腺ポリープ(fundic gland polyp:FGP)は,胃底部や胃体部に好発し,胃底腺と小囊胞(microcysts)からなるポリープとして古くから知られており,欧州などではhamartomatous cystic polypsやpolyps with fundic glandular cystsなどの名称で知られていました。また,家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)に多発する胃病変としての胃底腺ポリポーシスが,わが国から初めて報告されました1)。FAPに関連したFGPは,分子遺伝学的にはAPC変異が高頻度にみられると言われています。
一方,日常臨床ではるかに多く経験するのは,FAPとの関連のない患者においてみられる散発性のFGP(sporadic FGP)で,CTNNB1(β-catenin)変異を高頻度に伴います2)。したがって,FGPは腫瘍性異型を示さないものの,WHO分類(2010)では腫瘍性ポリープとして分類されています。さらに,gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)という,大腸や十二指腸のポリポーシス病変を欠き,胃腺癌を併発する家族性の胃底腺ポリポーシスが認められるという疾患も報告されていますが,その原因遺伝子は不明とされています3)。
さて,FGPは「幸せポリープ」というニックネームで呼称されることがあります。FGPは,胃食道逆流症症状や,十二指腸の異所性胃粘膜や大腸過形成性ポリープと大腸腺腫との合併が多いとされる一方,Helicobacter pylori(H. pylori)感染に伴う慢性胃炎,そして胃の腫瘍性病変とは負の相関があるとされています4)。特に,FGPがH. pylori陰性の非萎縮粘膜に発生し,胃の腫瘍性病変の合併がきわめて少ないことから,「幸せポリープ」と呼称されてきたのだと考えます。
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