60代の男性。糖尿病腎症による血液透析中で,2年前に心肺停止の既往あり。その際,循環器内科で虚血性心筋症の診断と冠動脈ステント植え込みを受けた。某年7月某日意識消失し,心肺停止(CPA)状態で救急隊により搬送され,来院時の心電図波形はPEA,心エコーでは心室の収縮は消失し,VF波形と判断され,除細動などの加療により心拍再開した。心拍再開後,ECG上wide QRSであり,虚血からのCPAは十分考えられ,緊急心臓カテーテル検査後,冠動脈形成術,並びにバルーン拡張術が施行された。不整脈が持続するため,大動脈内バルーン・パンピング(IABP)留置し終了となった。低体温療法を施行し,翌日より復温を行い,同日夕には体温36℃台となった。経過中,心室頻拍,心室細動の出現なく,翌日にはIABPを抜去した。その後,脳機能評価を施行,頭部CT検査,脳波検査,聴性脳幹反応(ABR)を行った。対光反射は消失しており,植物状態~脳死状態と推定された。
今回の心肺停止の真の原因は不明で,心電図所見などから心臓が原因である可能性は否定できない。心肺停止回復後の検査データ(表1)ではLDH,AST,CKなどの筋原性の酵素の上昇とCK-MB増加が認められた。CK/AST=738/105=7.02<10と心筋由来を示唆する結果1)であったが,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)としても,CK-MBのトータルCKに対する比率が通常のAMIとしては高すぎるのではなかろうか?はたして心筋壊死として説明してよいのであろうか……。
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