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脳神経外科領域における五苓散の応用について 【近年有用性が多く報告され,今後の漢方的側面からの作用機序解明が興味深い】

No.4867 (2017年08月05日発行) P.63

河尻澄宏 (東京女子医科大学東洋医学研究所)

登録日: 2017-08-03

最終更新日: 2021-01-06

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五苓散は5つの生薬,猪苓,沢瀉,茯苓,朮,桂皮で構成されており,前者4つは利水作用がある。利水作用とは水毒の調整作用の意で,浮腫傾向があるときに利尿作用を示す水分代謝調整作用を言う。

近年,脳神経外科領域で五苓散が使用される例が増えている。特に慢性硬膜下血腫(CSDH)における有用性が多く報告されている。報告によると,CSDH 22例,27血腫に4週間以上投与した結果,23血腫で副作用なく消失・縮小した1)。また,CSDH術後の五苓散使用例と非使用例のそれぞれ3879例(年齢,性別,BMIなどを調整した同例数)の比較では,使用例のほうが再手術率は低かった2)など,ほかにも複数の報告がある。CSDH以外にも,脳梗塞や脳腫瘍の脳浮腫に有効であったとされる報告も散見される3)。分子レベルの機序としては,五苓散は腎に存在するアクアポリン3活性を抑制し多尿を生じさせ,脳のアクアポリン4活性を抑制し脳浮腫を改善させると想定されている。

五苓散は利水薬の代表薬であり,古典的には口渇,尿量減少のあるときに用いるが,浮腫,めまい,頭痛,嘔吐,下痢などがあれば適応の可能性がある。論文にはこれらの有無についてほとんど言及されていないが,漢方的側面からは興味のあるところである。

【文献】

1) 宮上光祐,他:Neurol Surg. 2009;37(8):765-70.

2) Yasunaga H:Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:817616.

3) 土屋寿司郎, 他:漢方医. 2016;40(4):248-50.

【解説】

河尻澄宏 東京女子医科大学東洋医学研究所

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