30歳の女性。会社事務職。10月1日朝から腹痛が出現,同日夜には38.8℃までの発熱が認められた。近医を受診して腎盂腎炎が疑われ抗菌薬が処方されたが,症状は治らず,翌朝から悪心,下痢を伴うようになったため,当院外科外来を受診した。来院時腹部全体に圧痛,反跳痛を認め,血液検査では白血球数,CRPともに高値(表1)。腹部造影CTでは回盲部から大腸にかけての軽度の壁肥厚や管腔内の液体貯留を認めたため,急性腹症の精査目的に同日入院となった。なお患者によると,過去1年の間に同様の症状が2回あり,いずれも急性虫垂炎が疑われ他院にて精査をしたが,診断がつかず,症状も数日のうちに軽快しているとのことであった。また25歳時より半年に一度は足首の腫脹,疼痛を自覚していた。最終月経は9月27日からであった。
本例では症状,理学所見,検査値から腹膜炎を呈していると考えられたが,過去にも同様の症状を何度か呈しており,そのつど精査を行っているにもかかわらず,原因がつかめなかった。今までの病歴や当院でのCT所見からも虫垂炎は否定的であろう。若い女性でもあり,関節炎ともとれる発作もあるようなので,膠原病(自己免疫疾患)の可能性は考えられる。骨盤腔内感染症の可能性も否定できない。
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