抗真菌薬を処方するにあたっては,直接鏡検法による真菌の検出が必須である
抗真菌外用薬は,白癬菌とカンジダに対する最小発育阻止濃度(MIC)から,最適な薬剤を選択するのがよい
イミダゾール系抗真菌外用薬には,アレルギー性接触皮膚炎を起こしやすいものがある
単純疱疹・帯状疱疹に対する抗ウイルス薬は内服が原則であり,外用薬の併用は保険審査上の制約がありうる
抗菌外用薬は,耐性菌出現と感作の副作用に注意する
前稿で述べたように,ステロイド外用薬は「アレルギー」には汎用性が高いが,「感染症」と「外傷(皮膚潰瘍)」には無効であり,むしろ悪化させるため,原則禁忌である。
本稿では「感染症」に対する外用薬について解説する。「感染症」に対しては,「アレルギー」に対するステロイド外用薬のように「アレルギーなら何にでも効く」便利な薬は存在せず,病原体ごとに適切な薬剤を選択する必要がある。皮膚感染症の病原体は小さいほうから,ウイルス,細菌,真菌,虫(ダニ・シラミ)にわけて考えると網羅的に概観できるが,この中で外用薬が中心的役割を果たすのは真菌に対してであるから,まず抗真菌外用薬について述べる。
抗真菌外用薬の使い方には,抗ウイルス外用薬・抗菌外用薬と異なる点が2つある。1つは,抗ウイルス薬・抗菌薬については,内服薬の果たす役割が大きく外用薬は補助的であることが多いが,表在性皮膚真菌症(白癬,皮膚カンジダ症,癜風)については寄生部位が角層という人体最外層であることもあって外用薬単独での治療が基本となる,ということである。
もう1つは,抗ウイルス薬・抗菌薬については,治療前の病原体の確認は必ずしも実施されていないが,表在性皮膚真菌症では抗真菌薬処方前に鱗屑を採取し,水酸化カリウムを用いた直接鏡検法(KOH鏡検)で真菌を確認することが必須とされている,ということである。KOH鏡検を行う技術と道具がない場合,皮膚科医としては専門医への紹介を勧めざるをえない。逆に言うと,抗真菌薬の使い方を語る相手はKOH鏡検を行える者,すなわち皮膚科医ということになるから,話がおのずと専門医向けの様相を呈するのはやむをえないところである。
臨床的に表在性皮膚真菌症が疑われるのにもかかわらず,鏡検陰性ということはときどきある(鏡検で確認することが必須とされる所以でもある)。何事によらず「ない」ということの証明は困難で,繰り返し検査して「ない」ことの蓋然性を高めていくしかない。といっても1回の受診時に何度も検査を繰り返せるものではないから,いったんステロイド外用薬を処方して1~2週後に再検査するのが一般的である。実は真菌がいた(KOH鏡検偽陰性)のであれば,ステロイドにより真菌が増加して次回は検出が容易になる。増加した真菌によって病変が悪化するのではないかという懸念は当然であるが,少なくとも短期間では問題がなく,むしろ炎症が取れることで見た目は綺麗になることが多い。
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