【質問者】
村上孝作 京都大学医学部附属病院免疫・膠原病内科
血栓も出血も認めない症例ということかと存じますが,APTT延長は,(in vitroにおける)凝固因子活性の40~50%以下への低下を意味し,明らかな出血・血栓症状がない場合でも原因検索が必要です。APTTが延長し,外因系凝固能検査であるプロトロンビン時間(PT)が正常の場合,出血性疾患である血友病やvon Willebrand病,血栓性疾患であるAPS等の鑑別が必要です。
①APTTは,PT-INRと異なり標準化することが難しく,試薬・採血手技等により数値が変動しうる点に注意し,特に無症候例では再検も検討します。ヘパリン混入による延長もあり得ます。
②クロスミキシング試験をします。患者・正常血漿を種々の比率で混合し,凝固時間曲線の形状から凝固因子欠損と自己抗体産生を判別します。凝固因子欠損が疑われれば,該当する凝固因子を同定します。
③自己抗体の存在が疑われた場合は,抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies:APL)を検索します。後天性血友病で陽性化する抗Ⅷ因子抗体は,凝固法(Bethesda法)で判定されるので,ループスアンチコアグラント(LA)陽性例では偽陽性になるからです。一方,膠原病では,健常人で数%の陽性率にとどまるAPLが高発現します(SLEで50%,ほかで10~30%)1)。
④わが国で保険収載されているAPLのうち,血栓症(および妊娠合併症)のリスクが高いのは,抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体(aβ2GPⅠCL)とLAです。まずこの二者を測定し,陰性の場合に抗カルジオリピンIgG抗体(aCL)を測定します。これらすべてが陰性で他のAPLが陽性のケースもありますが,低頻度です。
残り651文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する