〔略歴〕1995年岡山大卒。豪アデレード母子病院などを経て、2004年英ロンドン大院修士課程修了。英国立母子保健共同研究所などを経て、11年国際母子保健研究所所長。12年より国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長。14年よりコクラン日本支部代表、17年6月より現職
1992年に英国で設立された「コクラン」は、臨床研究を対象に系統的レビューを作成し、「根拠に基づく医療」(EBM)を世界に普及してきた。日本には2014年、国立成育医療研究センターに支部が開設。今年6月には、世界で17番目となる英国本部直轄の「センター」(コクランジャパン)へ昇格した。代表の森臨太郎氏に、EBMを巡る日本の課題を聞いた。
日本でのEBM普及が世界に遅れたというのは事実です。最大の理由は、日本が米国に次ぐ医療の巨大市場だからです。日本は医薬品・医療機器、さらに診療の基本方針を形作る医学教育や教科書も全て国内完結できる稀な国で、EBMが興った欧州やカナダから物理的な距離もある。それゆえグローバルな潮流をあえて取り込む必要がなかった面があります。
日本の医療活動の存在感と影響力は非常に大きいものです。少子高齢化が最も進んでいることもあり、世界は日本が難局にどう立ち向かうのか、日本の“実験”を見守っている状況です。良い点は自国に生かし、失敗からも学ぼうとしているのだと思います。
コクラン本部はGlobal Agingというグループ横断的なアクティビティーを立ち上げ、喫緊の課題に位置づけています。本部のある英国政府にとっても高齢者医療は最優先課題です。高齢者に対するケアや老年医学領域のクリニカルクエスチョンなどについて、日本から発信してほしいという期待があると思います。
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