植込み型VAD装着後の治療成績向上のためには,周術期と慢性期における特有の合併症を理解しておく必要がある
心臓移植までの長期間の在宅治療継続のためには,多職種からなるチーム形成下でのVAD専門外来の構築が鍵となる
生活の質(QOL)の高い在宅および社会での活動維持のために,患者教育を繰り返し実施する必要がある
わが国において植込み型補助人工心臓(ventricular assist device:VAD)は,重症心不全患者の移植への橋渡し(bridge to transplant:BTT)を目的とした治療法である1)2)。在宅治療を可能とし,移植待機中の生活の質(quality of life:QOL)を高められることにこの治療の第一義的な目的がある3)〜5)。VADは流量補助により全身の血行動態を大幅に改善し,術前からの心不全に伴う体液貯留,臓器灌流低下による臓器障害からの回復を促進する強力なデバイスと言える。しかし,術前からの高度臓器障害が遷延した場合や,血行動態改善後に新規に併発するデバイス関連合併症が生じると,VADの有効性と安全性は損なわれることになる。VAD特有の合併症について米国の補助人工心臓レジストリー(Interagency Registry for Mechanically Assisted Circulatory Support:INTERMACS)では,17種類(そのほかを含め18種類)の合併症を有害事象と定義し,発生時にはその報告を義務づけている(表1)6)。本稿では,VAD装着時の代表的な合併症である出血,神経機能障害,感染症について述べる。
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