2017年8月26日から5日間にわたり,バルセロナ(スペイン)のフィラ・グラン・ビアで欧州心臓病学会(ESC)学術集会が開催された。参加者は3万人を超え,直前のテロにより懸念されたキャンセルもほとんどなかった。一般演題の採択率は42%。わが国からは,今年も世界最多となる1482報が投稿され,40%弱が採択された。投稿数2位のイタリアは48%,3位ドイツは57%だった。本稿では,大規模な臨床研究を中心に報告したい(COMPASS,CANTOS,RE-DUAL PCIについては,先にWeb医事新報で報告)。
心房細動(AF)大規模レジストリ“GARFIELD”1)などが示すように,抗凝固療法下にあるAF例は多くが心臓死を遂げる。中でも心不全(HF)死が多い。しかしランダム化試験をメタ解析すると,HF合併AF例の生命予後を,β遮断薬は改善しない2)。そのような状況のもと,静脈隔離アブレーションにより,HF合併AF例の総死亡ハザード比(HR)が0.53〔95%信頼区間(CI):0.32~0.86〕まで減少したとするランダム化試験が報告された。“CASTLE-AF”である。ユタ大学(米国)のNassir F. Marrouche氏が報告した。
CASTLE-AFの対象は,症候性の発作性/持続性AF例に左室駆出率(EF)35%以下,NYHA分類Ⅱ度以上のHFを合併し,ICD/CRT-Dが既に植え込まれていた397例である。ランダム化後に34例が脱落し,最終的に標準治療群184例とアブレーション追加群179例の比較となった。平均年齢は64歳,9割近くがNYHA分類Ⅱ度とⅢ度であった。AFの病型は30~35%が発作性,65~70%が持続性である。
AF治療についてはリズムコントロールが推奨され,加えて全例で抗凝固薬を服用するよう指示された。アブレーションは静脈隔離術とし,術者の判断による追加アブレーションも許された。
約60カ月間の追跡後,1次評価項目である「総死亡・HF入院」は,アブレーション追加群で相対的に38%の有意な減少を認めた(HR:0.62,95%CI:0.43~0.87)。さらに「総死亡」のみで検討した結果も,冒頭に記した通り,著明なリスク減少を認めた。
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