日本循環器学会と日本心不全学会は10月31日、心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」とする一般向けの定義を公表した。両学会は市民公開講座を通じて定義の啓発を図るとともに、医療従事者に対しても普及を呼び掛ける。
定義では、心ポンプ機能の低下を招く高血圧、心筋梗塞、弁膜症などを総称する形で「心臓が悪いために」とし、発病後に急性増悪と改善を繰り返す臨床経過を「だんだん悪くなり」と表現。慢性心不全の5年生存率が50%程度であることを踏まえ「生命を縮める病気」とした。
同日に会見した循環器学会の小室一成代表理事は「心不全の治療法は進歩しているが、完治することは少ない。(定義の普及を通じて)生活習慣の改善など“0次予防”につなげていきたい」と強調した。
両学会はまた、11月から、心不全治療の全国的なデータベース構築に向け、1万人を対象にした調査に着手することを発表した。心不全学会の筒井裕之理事長によると、調査では2013年度に循環器学会の専門研修施設に入院した患者を後ろ向きに登録し、治療薬の種類や量、経過などを最長5年間追跡。来年度のできるだけ早い時期にデータベース化を始めるという。