胃の常在菌としてのHelicobacter pylori(ピロリ菌)の存在は,胃の種々の症状とはほとんど相関がないと言われていますが,もともとピロリ菌は,胃・十二指腸潰瘍の原因菌として発見されたはずです。潰瘍の場合は症状があると思います。ピロリ菌は,感受性がある者には潰瘍を起こすものの,感受性のない者はまったく無症状ということなのでしょうか。順天堂大学附属静岡病院・永原章仁先生にご解説をお願いします。
(千葉県 K)
ピロリ菌の感染は,胃の種々の症状とはほとんど相関がないと言われていますが,これは,胃・十二指腸潰瘍がない場合です。胃・十二指腸潰瘍がない場合においても,ピロリ菌は細菌感染症ですので,胃の中に炎症を起こします。かぜを引くと,喉が赤くなり,黄色い鼻水が出ますが,ピロリ菌は胃に慢性感染する細菌ですので,内視鏡では発赤,浮腫,白濁粘液などの炎症所見がみられます。こういったピロリ菌感染でみられる内視鏡所見は,自覚症状とほとんど関連しないことが知られているのです。ただ,10人に1人は,除菌によって症状が改善する患者がおられるので,まったく症状に関係しないわけではありません。したがって,ピロリ菌に胃は反応しているものの,症状の観点からは,「感受性」がなく無症状例が多いのです。
残り489文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する