利益相反(conflict of interest:COI)は,「外部との経済的な利益関係等によって,公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる,または損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態」と定義され,公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては,データの改ざん,特定企業の優遇,研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が指摘されている1)。
また,広義の利益相反は,「狭義の利益相反」と「責務相反」の双方を含み,狭義の利益相反は,「個人としての利益相反」と「組織としての利益相反」の双方を含んでいる1)。臨床研究に関するCOI管理(マネージメント)においては,これまで,「狭義の利益相反」の中の「個人としての利益相反」を中心に取り扱われてきた。本稿においても「個人としての利益相反」を中心に最近の動向を述べる。
わが国における医学研究における「COI管理ガイドライン」は,2006年3月に文部科学省より示された「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」が最初のものである。その後,2008年3月に厚生労働省から「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」が公表された。さらに,2011年2月には日本医学会より「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」が公表されている。
ところが,2013年に高血圧治療薬ディオバン®に関する5つの臨床研究事業においてデータ操作やCOIに関する重大な問題が指摘され,結果として大多数の論文が取消/撤回に至るという事態が発生した。厚生労働省は,まず2013年8月,「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」を設置し,2014年4月に報告書を公表した。さらに,この報告書の提言に基づき,2014年4月に「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」が設けられ,同年12月に報告書2)が公表された。いずれの報告書においても医学研究における適切なCOI管理の重要性が指摘されている。これらの報告書をもとに策定され,2017年4月に成立し,2018年4月に施行予定の「臨床研究法」においては,臨床研究に関する倫理審査委員会の認定制度・機能強化とともに,COI管理に関しても具体的な基準が求められている。
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