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高齢者雇用と産業保健【健康,生きがい,精神的な充足など課題は多い】

No.4892 (2018年01月27日発行) P.55

諏訪園 靖 (千葉大学環境労働衛生学教授)

登録日: 2018-01-30

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定年の引き上げ,継続雇用制度の導入等による高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに,経済および社会の発展に寄与することを目的として,2013年4月,高年齢者雇用安定法が改正・施行された。そして,企業に対し,希望者には65歳まで働くことのできる仕組みを設けることが義務化された。

少子高齢化による労働力減少により,高齢者が生涯現役で働けるような社会の実現が課題となっている。15年の人口動態統計における50~54歳と60~64歳の死因別死亡率(人口10万対)を比較したところ,第1位は悪性新生物で98.2→298.3,第2位が心疾患で32.29→75.4と急増している1)。また,高齢社員活用時に重視すべき事項に関する調査では,84%の管理職が「本人や家族の健康」を重視していた2)

以上のように,「健康」は高齢労働者の課題であり,特に「がん」や「心疾患」「脳血管疾患」の予防と対応が求められる。「生きがいなどの心の問題」への対策も重要と思われる。「体力」の減退から,高負荷の作業や転倒のリスクにも配慮が必要である。そのため,定期健診・がん検診による早期発見・早期治療を勧めるとともに,若年からの健康意識の向上を図り,体力増強や生きがい創造などに関する対策も重要となる。さらには,職場環境の改善や新たな職の人事制度の構築など,産業保健スタッフのみならず,人事など多職種を巻き込んだ問題解決が望まれる。

【文献】

1) 厚生労働省:平成27年(2015)人口動態統計.

2) 高齢・障害・求職者雇用支援機構:高齢社員の人事管理と展望─生涯現役に向けた人事戦略と雇用管理の研究委員会報告書─(平成27年度).

【解説】

諏訪園 靖 千葉大学環境労働衛生学教授

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