ループス腸炎は全身性エリテマトーデス(SLE)の比較的稀な合併症として知られているが,免疫抑制療法による治療介入が必要な病態である。しかし,一般的な感染性腸炎と同様の症状で発症し,SLEの初発症状がループス腸炎となる例もあり,早期診断が困難なケースも多い1)
腹部CT所見では,空腸・回腸を中心とした腸管壁肥厚・腹水・異常な腸管壁増強(target sign)・腸間膜動脈拡張(comb sign)を認めることが多いため,これらの所見があればループス腸炎を疑う契機になる
病理所見では主に粘膜下層から漿膜層にかけての血管炎を認めるが,内視鏡検査による生検では血管炎を証明できないことのほうが多い2)
ループス腸炎の鑑別疾患として,同様の小腸病変をきたす,感染性腸炎・小腸アニサキス症・サイトメガロウイルス(CMV)腸炎・腸結核・血管性浮腫・クローン病・上腸間膜静脈血栓症・悪性リンパ腫・血管炎が重要である。SLEの初発症状としてループス腸炎が発症した症例では,SLEの診断に難渋することが多い
ループス腸炎は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の0.2~9.7%に合併する比較的稀な臓器障害である。別名ループス腸間膜血管炎とも呼ばれ,血管炎による腸管虚血が穿孔や出血を引き起こす場合は致死率が高くなる。症状は一般的な感染性腸炎と同様に,嘔気・嘔吐・腹痛・下痢などを呈するため,症状のみでは確定診断に至ることが困難である3)。
SLEの好発年齢である20~30歳代の女性で,1週間以上持続する,もしくは再発する腹痛・下痢を認める場合は,ループス腸炎を考慮する必要がある。また,SLEの消化器病変ではループス腸炎のほかに,蛋白漏出性胃腸症や偽性腸閉塞が知られているが,これらの病理所見でもループス腸炎と同様の所見を認める場合も多く,一連の疾患概念と考えられる1)。
SLE患者でループス腸炎を合併する例では非合併例と比較して,血清C4値が低い傾向にある。また,ループス腸炎を再発しやすい例では,大腸病変を有している場合や,ループス膀胱炎などの膀胱尿管病変の合併が多い4)。
ループス腸炎は腸管のすべての層を障害するため,多彩な画像所見を取りうるが,80~85%は上腸間膜動脈の血管炎を呈するため,回腸と空腸に連続した病変が出現することが多い。
腹部CT検査で出現頻度の高い所見は,腸管浮腫(94.8%),腹水(55.7%),target sign(83.5%),comb sign(100%),腸管拡張(86.6%)である(図1)5)。target signとは,腸管の垂直スライスで認める同心円状構造で,通常成人で認めた場合は腫瘍関連疾患が多い。その場合,孤立性で認めることが多く,ループス腸炎では複数箇所で認めることが多いため,この点が鑑別に有用と考える。comb signとは,腸間膜動脈の拡張で目視できる血管影で,腸間膜動脈の血流増加を示唆する。クローン病でも同様の所見を認めることが多い。
残り2,835文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する