【質問者】
藤田征弘 旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野 講師
「diabetic nephropathy」は,糖尿病に特有な細小血管合併症のひとつであり,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の主要な原因疾患です。1型糖尿病での腎症の典型的な臨床経過は,糖尿病発症後の比較的早期から糸球体過剰濾過(hyperfiltration)が生じ,微量アルブミン尿期,顕性蛋白尿期を経て,その後腎機能が低下して末期腎不全期に至ります。2型糖尿病では糖尿病の発症時期が不明瞭なため,糖尿病と診断されたときには既に蛋白尿を認める症例も少なくありませんが,典型的な腎症の自然史は1型糖尿病とほぼ同様の臨床経過をたどると考えられています。
近年,糖尿病や高血圧などに対する治療成績の向上と糖尿病患者の高齢化により,典型的な腎症の臨床経過ではなく,アルブミン尿の増加を伴わず腎機能が低下する症例が増加しています。また,2型糖尿病はcommon diseaseであり,その他の腎疾患を偶然に併発することもめずらしくありません。特に,加齢,動脈硬化,高血圧などによる腎硬化症を合併した場合,従来のdiabetic nephropathyと区別することは難しく,糖尿病に特有の合併症であるdiabetic nephropathyの概念そのものがあいまいとなってきました。
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