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災害時の周産期医療体制,特に地域周産期医療におけるBCPをつくるには【各医療機関がBCPを策定し,地域が1つの医療機関として対応できることが理想】

No.4900 (2018年03月24日発行) P.53

海野信也 (北里大学医学部産婦人科教授)

菅原準一 (東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授)

登録日: 2018-03-23

最終更新日: 2018-03-19

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  • 大規模災害はいつ発生するかわかりません。災害対策には事前の準備,訓練が重要ということはわかっていますが,なにをどのように準備していいのか,経験のないものにはなかなかわかりません。医療機関の業務継続計画(business continuity plan:BCP)策定の重要性が指摘されています。地域の周産期医療体制を維持,確保するためのBCPが必要だと思われますが,どのようにつくっていけばよいのでしょうか。東北大学東北メディカル・メガバンク機構・菅原準一先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    海野信也 北里大学医学部産婦人科教授



    【回答】

    言うまでもありませんが,分娩やそれに付随する周産期救急は平時にも途切れることはなく,特殊な領域と言えます。また,ほとんどの地域において既に搬送ネットワークが構築されています。このような観点から,想定内の限定的な災害に対しては,近隣ネットワークへの相乗り等によって対応できるというイメージがありますが,そのことが災害対応への過信につながっていることを危惧しています。

    BCP策定のポイントは,地域にとって最悪の事態への柔軟な対応を平時から考えておくことです。たとえば,先の東日本大震災では,多くの分娩取り扱い診療所が全壊し,沿岸部の基幹病院においては平時の3倍近くの分娩に対応した期間もあります。また,自家用車の流失や燃料不足,公共交通機関の機能不全によって,多くの妊産婦が予定施設以外での分娩を余儀なくされました。さらには,各病院のインフラ被害の把握が困難で,震災発生から3日目以降に次々損壊状況が明らかとなって,目まぐるしく分娩応需可否状況が変わり,地域対応プランの頻回の策定・変更に迫られました。このような事実を活かしたBCP策定が求められます。

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