フレイル予防に向けて,高齢期でも豊かな社会性を維持する秘訣について,東京都健康長寿医療センター研究所・藤原佳典先生にご回答をお願いしたいと存じます。
【質問者】
田中友規 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座
近年,フレイルは身体心理的問題だけでなく,社会的側面も重視されています(日本老年医学会,2014年)。
高齢者の社会参加をproductivityの理論1)に基づき①就労,②ボランティア活動,③自己啓発(趣味,学習,保健)活動,④友人・隣人等とのインフォーマルな交流,⑤要介護期のデイ(通所)サービス利用,の5つのステージから定義してみましょう。これらのステージそれぞれについて,参画する人はそうでない人に比べて健康度が維持されやすいことが,国内外の多数の研究から実証されてきました。
一方では,5つのステージは重層的であり,求められる健康度や社会的責任により高次から低次へと階層構造をなします。たとえば,金銭的報酬による責任が伴う就労を第1ステージとすると,就労が困難になった者は,次に無償の社会貢献である第2ステージのボランティアへ移行します。他者への直接的な貢献に負担を感じるようになると,第3ステージである自己啓発(趣味,生涯学習)活動へと移行しますが,自己啓発活動は原則として団体・グループ活動です。さらに,生活機能が低下すると,これらの制約に縛られない第4ステージの友人・隣人等との私的な交流や近所づきあいへと移行します。さらに,要支援・要介護状態に進むと,受動的な社会参加も可能である第5ステージの通所サービスや地域のサロンの利用へと移行します。次のステージへシームレスに移行できない場合に,孤立が生じ,その結果として様々な健康障害に陥る可能性があります。
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