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糖尿病患者の病態に応じた治療方針の立て方 [学術論文]

No.4693 (2014年04月05日発行) P.20

岩岡秀明 (船橋市立医療センター代謝内科部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-07

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  • 1型糖尿病,急性合併症,妊娠の患者は必ず専門医に紹介する。初診時はまずインスリンの絶対的適応を判断し,その場合は早急に専門医に紹介する。次にインスリンの相対的適応を判断する。インスリンの適応でない場合には,血糖コントロールの評価を行う。血糖値・HbA1c値のみでなく,尿ケトン体の有無,全身状態のチェックも重要である。インスリン治療に不慣れな場合は,インスリンの導入を遅らせず早期に専門医に依頼をする。外来でインスリンを導入する場合は,BOTから開始すると受け入れられやすい。

    本稿では糖尿病を専門としない開業医および勤務医を想定して,初診時の病態に応じた糖尿病の治療指針について記載する。

    1. 糖尿病専門医との連携が必要な場合

    まず初めに,糖尿病専門医との連携が必要な場合を記載する。この数年間で糖尿病の治療法は大きく変化しており,それに伴い専門医との連携の重要性も増している。患者が以下のような症状・病態を呈している場合には,専門医への紹介・コンサルトが必要となる1)
    ①1型糖尿病:膵β細胞が破壊され,絶対的インスリン欠乏に至る。発症時には,口渇,多飲,多尿,倦怠感,体重減少,高血糖,尿ケトン体陽性が認められる。
    ②急性合併症(高血糖クライシス):高血糖(通常は300mg/dL以上)で脱水所見があり尿ケトン体陽性の場合は,糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis;DKA)の可能性がある。また,尿ケトン体が陰性でも脱水徴候が著しい場合は,高浸透圧高血糖症候群(hyperosmolar hyperglycemic syndrome;HHS)の可能性がある。急性期には入院治療が必要である。
    ③インスリン治療の導入:2型糖尿病におけるインスリン療法は,早期に導入すれば離脱可能な場合も多い。また,インスリンは製剤・デバイスの種類も多く注射回数も様々である。インスリン治療に不慣れな場合,特に導入については専門医に依頼する。
    ④HbA1c 8.0%以上が続く場合:複数の薬剤を使用していてもHbA1c 8.0%以上が続く場合には,薬剤の変更・追加,インスリン療法への変更,食事療法の再指導,教育入院などが必要であり,専門医に紹介する(日本糖尿病学会のホームページには,全国の糖尿病専門医の氏名・勤務先一覧を地域別に検索できる機能がある2)。連携先に迷う場合などは,ぜひ活用して頂きたい)。
    ⑤妊 娠:糖尿病合併妊娠,妊娠中に発見された糖尿病は,糖尿病専門医・産婦人科専門医・眼科専門医との連携が必要である。

    2. 初診治療時の注意点と手順

    新規に治療を開始する患者で,初診時の治療方針決定のための確認事項で特に重要なポイントは,以下の3点である。

    ①血糖値(高血糖の程度とその持続期間)
    ②体重とその推移(特に急激な体重減少の有無)
    ③尿ケトン体の有無(高血糖があり,尿ケトン体も陽性の場合は早急にインスリン治療が必要)

    新たに経口血糖降下薬を投与する場合は必ず少量から始める。特に従来から使用機会の多いSU薬は低血糖のリスクがあるため,細心の注意が必要となる。通常,2週間以内に再度来院してもらい,血糖値やグリコアルブミンなどのデータから薬剤への反応性を見つつ,投与量の調整またはインスリンへの変更を考慮する。
    治療目標は,原則としてHbA1c 7.0%未満とするが,目標値は患者の年齢,罹病期間,併発疾患の有無,ADL,サポート体制などから個別に設定すべきである。具体的には,たとえば70歳以上の高齢者で併発疾患も多く,サポート体制も不十分な場合には8.0%くらいを目標とする。
    薬剤の追加や変更は,通常,同一薬剤で2~3カ月間経過を見てから行う。通常はHbA1c 8.0%以上が続く場合は,薬剤の追加や変更を検討する。また,経口血糖降下薬を用いる場合でも,食事・運動療法を並行して確実に行うことが重要なのは言うまでもない。

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