AD患者のBPSDに関する最近の分類分析の結果,アパシーと食欲不振などの摂食障害を伴う(フレイルを呈する)特徴的なクラスターの存在が明らかとなった(図)1)。
アパシーとフレイルは疾患進行のリスク因子でもある。ところで,人参養栄湯は『和剤局方』を原典とし,太陰病期の虚証で,消耗性疾患罹患時や外科手術後に体力低下が著しく,気血両虚で,全身倦怠,動悸,盗汗,咳嗽,下痢,健忘などを伴う場合に用いられる方剤であるが,その投与により,本例では,コリンエステラーゼ阻害薬の併用なく,食欲・意欲,認知機能の改善が得られた。
そして,本例を含む我々の研究(表)では,人参養栄湯投与により食欲不振スコアが有意に改善し,食事量スコアも有意な上昇が認められ,NPIスコアによるBPSDの評価でも,NPI総計およびアパシー,食行動のサブスコアに加え,介護者の介護負担感も有意に改善した。さらに,Vitality Index(意欲指数)とMMSEにも有意な上昇が認められた2)。