(東京都 S)
COIの申告と管理は,研究の実施と発表という2つの段階で行われます。論文や学会講演などの研究発表において,研究者と資金提供者の関係を明示することにより,研究結果が変わるわけではありませんが,読者(聴衆)の解釈や行動に心理的な影響を与えると言われており,医学研究の公平性を保つためにきわめて重要な活動です。
開示すべき項目や基準についての原則は日本医学会の利益相反ガイドラインに示されていますが,実運用は雑誌や学会ごとに多少異なります。
ご質問の学会講演・発表のCOIのスライド表示ですが,日本医学会のガイドラインでは,筆頭・共同を含めた全員の利益相反を開示の対象とし,内容については企業名とCOIの種類(講演料,研究費など)を示すべきとなっています。しかし,実態は,たとえば2014(平成26)年の日本医学会の分科会へのアンケートでは筆頭演者のみ(60%),企業名のみ(24%)など様々でした。最近では座長も開示の対象とするとか,内容も資金提供の金額まで開示するという学会などもあり,徐々に厳しくなっている印象を受けます。
学会によりCOI開示基準が異なるので個別に確認して頂くことが必要ですが,開示内容が不十分であると指摘されることはあっても,詳細に開示しすぎて聴衆が誤解するということはないので,悩んだときにはすべてを開示して判断は聴衆に任せるという姿勢がよいと思います。スライドの開示時間については,同ガイドラインでは一定時間表示するとあり,具体的な時間の記載はありませんが,企業名を読み上げることを推奨しています。時間が短すぎて何が書いてあるかわからなかったということは避けて頂きたいと思います。
【参考】
▶ 日本医学会利益相反委員会:日本医学会COI管理ガイドライン. [http://jams.med.or.jp/guideline/coi_guidelines.pdf]
▶ 日本医学会利益相反委員会:平成26年度日本医学会利益相反(COI)アンケート調査報告書. [http://jams.med.or.jp/coi/houkoku_h26.pdf]
【回答者】
土岐祐一郎 大阪大学大学院医学系研究科外科系 臨床医学専攻消化器外科学教授