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境界型糖尿病の進行予防 ライフスタイル介入の意義と実際 [学術論文]

No.4706 (2014年07月05日発行) P.19

渥美義仁 (永寿総合病院糖尿病・内分泌内科糖尿病臨床研究センター長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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  • 糖尿病に至っていない境界型の段階では,本人,周囲,医療機関などすべてが十分に対応せず,結局糖尿病の発症に至ることが多い。対応策として,ライフスタイル介入や薬物介入が挙げられ,その効果と実現に必要な人的資源,経済性など様々な面から研究が行われてきているので紹介する。

    1. 国内外で増加する糖尿病患者

    糖尿病の患者数は,新興国を中心に世界中で増え続けていて,“diabetes pandemic”と称されている。最近,厚生労働省はわが国の糖尿病患者数が2015年までに1500万人まで増加すると予測し,患者数が1000万人を下回らないと医療財政が破綻すると発表した。また,世界では,国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)が,2025年頃に患者数が約3億5000万人に達すると予測している。このような糖尿病患者数の急増は,世界の人々の健康ならびに医療経済を脅かすとして,2006年に国連総会で非伝染性慢性疾患として初めて,「糖尿病は世界の健康への脅威」と決議された。同時に,毎年11月14日(インスリン発見者Bantingの誕生日)を“世界糖尿病デー”として啓発活動を行うことが決まった。この国連決議は,国連加盟国に対する,健康行政の中で糖尿病対策を優先すべきというメッセージである。

    2. 境界型糖尿病の現況

    糖尿病の治療やケアも重要であるが,前段階の境界型の段階でとどめるためには境界型への介入も重要である。前述した,厚生労働省が発表した糖尿病患者数を500万人減らすという目標を達成するためには,まさにこの境界型の段階での予防が重要となる。厚生労働省の平成24年国民健康・栄養調査報告によると,境界型に相当する「糖尿病の可能性を否定できない者」は男性12.1%,女性13.1%で,平成19年と比べて男性で1.9%,女性では2.8%減少していた1)。ちなみに,同調査の「糖尿病が強く疑われる者」は男性15.2%,女性8.7%で,平成19年と比べて男性は0.1%減少し,女性は1.4%増加していた。「糖尿病が強く疑われる者」の推計人数は,平成19年の890万人から950万人に増えたが,「糖尿病の可能性を否定できない者」は1320万人から1100万人に減少していた。この調査での「糖尿病の可能性を否定できない者」とは,HbA1cの測定値(national glycohemoglobin standardization program:NGSP)が6.0%以上,6.5%未満の人であり,血糖値は考慮していない。

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