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薬剤安全使用のための薬剤性肺障害診断のコツ【すべての薬剤において肺障害を起こす可能性があることを念頭に,早期診断することが重要】

No.4910 (2018年06月02日発行) P.52

高橋弘毅 (札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座教授)

坂東政司 (自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門教授)

登録日: 2018-06-04

最終更新日: 2018-05-29

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  • 最近,悪性腫瘍や膠原病に対する分子標的治療,免疫治療を目的とした新薬が次々と臨床承認され,苦しむ患者への朗報となっています。薬剤を安全に使用する際,特に気をつけたい有害事象のひとつに薬剤性肺障害が挙げられますが,使用前後にチェックすべき身体所見,検査としてどのようなことに留意したらよいか,自治医科大学・坂東政司先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    高橋弘毅 札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学 講座教授


    【回答】

    薬剤性肺障害とは,薬剤の使用により起きた呼吸器系の障害の中で薬剤と関連があるものと定義され,間質性肺炎や好酸球性肺炎,肺胞出血などのいくつかの臨床病型に分類されています1)。また薬剤は,医療用医薬品以外に一般用医薬品や医薬部外品,健康食品,サプリメントなどすべてが含まれています。有害事象(因果関係の有無を問わず,薬剤を投与された患者に生じた好ましくないすべての徴候,症状または疾病)の中で,副作用(因果関係が否定できない,薬剤の使用により生じた有害で意図しない反応)と断定することはしばしば困難であり,相対的に他の要因の可能性も考慮して因果関係を推定しているのが現状です。

    薬剤性肺障害の早期発見と適切な対応を支援する目的で,日本呼吸器学会から「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」1)が出版されており,因果関係を判断する評価点としては,①再投与によって有害事象の再発がある,②被疑薬中止により有害事象が軽快する,③発現時期が副作用として妥当である,④事象を引き起こす他の要因がない,の4点が挙げられています。

    薬剤性肺障害の診断は,症状・薬剤摂取歴・既往歴・身体所見・血液検査・胸部画像検査などから総合的に行われますが,すべての薬剤が肺障害を起こす可能性があることを常に念頭に置き,早期診断を行うことが最も重要です。

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