進行(非扁平上皮)非小細胞肺癌で特定の遺伝子変異がみられた場合は,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療を行う
免疫チェックポイント阻害薬(PD-1,PD-L1に対する抗体薬など)の非小細胞肺癌に対する有効性が示されている
5-HT3およびNK1受容体アゴニストとステロイドを予防的に併用することにより悪心・嘔吐の程度は格段に軽減する
治療の進歩により生存期間延長,副作用の軽減,入院期間の短縮,QOLの改善などがもたらされた一方,長期治療による経済的負担,就労に関する問題,遅発性副作用による日常生活の障害などが生じている
多職種チーム医療の連携は不可欠であり,患者・家族に対する支援への取り組みを,迅速にどこまで強化できるかが課題である
2016年,わが国では37万2986人(男性21万9785人,女性15万3201人)ががんで死亡し,そのうち肺癌による死亡は7万3838人(男性5万2430人,女性2万1408人)と約20%を占めた。一方,2013年の新規がん罹患数(推計)86万2452人(男性49万8720人,女性36万3732人)のうち肺癌は13%,11万1837人(男性7万5742人,女性3万6095人)であった。すなわち,肺癌は日本人のがん死亡の原因の1位であり,しかも全がんに比べ致死率が高いことがうかがえる。実際,2006~2008年診断例における5年相対生存率は男性で27.0%,女性で43.2%であった(以上,国立がん研究センターがん情報サービスの公開データによる)1)。
肺癌は非小細胞がんと神経内分泌腫瘍(小細胞がんと大細胞神経内分泌がん,カルチノイドが新しい概念として統一された)に分類されるが,いずれも臨床病期などから完全切除例,局所進行例,進行例として治療が選択される。CT検査の普及,より安全・低侵襲な手術の開発などにより完全切除例の比率が高まり切除成績は向上しつつある2)。
一方,遠隔転移を有する進行肺癌においては治癒が望めないとは言え,特に進行非小細胞肺癌の治療の進歩は目覚ましく,現在も刻一刻と目まぐるしい勢いで変化しつつある3)。