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(2)肺癌サバイバーシップケア・支援の実際[特集:肺癌サバイバーに医師ができること]

No.4915 (2018年07月07日発行) P.34

佐々木治一郎 (北里大学医学部附属新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門臨床腫瘍学教授)

登録日: 2018-07-09

最終更新日: 2018-07-04

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がんサバイバーとは,がんと診断された生存者すべてであり,がんサバイバーに影響を受ける家族・介護者を含む

がんサバイバーシップとはがんサバイバーの生き方・考え方を指し,急性期,移行期,延命期,安定期,終末期の時期がある

がんサバイバーシップケア・支援は身体的問題,精神的問題,社会的問題,スピリチュアルな問題の緩和・解決を目標とする

肺癌サバイバーシップケア・支援の実践として,がん診療地域連携クリティカルパス,がん相談支援,緩和ケア,アドバンス・ケア・プランニングがある

肺癌サバイバーシップケア提供者の育成には,緩和ケア研修,がんプロフェッショナル養成プランが有用である

肺癌サバイバーシップ支援者の育成には,国立がん研究センター認定がん専門相談員認定事業,日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲーター制度,がんピアサポーター養成制度が有用である

1. がんサバイバーとがんサバイバーシップ

1986年,米国に設立されたNCCS(National Coalition for Cancer Survivor)は,「がんサバイバー」を「がんと診断を受けた生存者すべてで,診断された時期は問わない」と定義し,がんサバイバーの生き方に影響を受ける親族・友人・介護者も「がんサバイバー」に含まれると宣言した。さらに,「がんサバイバーシップ」という概念が提唱された。がんサバイバーシップとは,がんサバイバー(家族・友人を含む)の生き方・考え方をいう。

NCCSの創立の中心メンバーで,医師でありがんサバイバーであるMullanは,1985年にNew England Journal of Medicineに“Seasons of Survival:Reflections of a Physician with Cancer”を寄稿し,サバイバーには以下の3つのシーズン(時期)があると述べた。

①急性期(acute survival)
がんと診断されてから,がんに対する治療が一通り終了するまでの時期。
②延命期(extended survival)
急性期のがん治療を終え,完全奏効あるいは部分奏効に入ったり地固め療法や維持療法を行ったりして,がんをコントロールできている時期。
③安定期(permanent survival)
治癒したと言える時期。

Mullanは,この3つの時期それぞれに,我々医療者がサバイバーやその家族・介護者のサバイバーシップを支援する必要があることを示した1)。その後,急性期と延命期の間に移行期(transitional survival)があり,延命期と安定期はがん腫や治療効果などの違いによって枝分かれするのでより細かな分類が必要であるという意見や2),サバイバーも含めて最終的に人は死を迎えるので終末期(final stage of survival)を含めた4つの時期を考慮すべきであるという意見も加わってきた(図1)。

 

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