米国での中田氏の同僚医師で「Fluid Dynamics」論文の共著者でもあるイングリッド・クウィー氏も、同論文について「中田先生のライフワークであり、水と脳の総合作品。人生の晩年に書かれたこの論文は、提出から24時間以内にアクセプトされた」と述べ、その価値を強調した。
クウィー氏は、数々の研究成果や新潟大統合脳機能研究センター創設などの事業を生み出した中田氏の類い希なる知性の源泉に「永遠の少年」と「論理性」があるとし、「彼のロジックの鋭さは魅惑的なほど異様に単純であるか、とてつもなく厳密なものだった。彼の研ぎ澄まされた知性は何ものをも見落とさず、どんな問題にも立ち向かっていった。この知性は複雑系を楽しんで追究した」と述べた。
米国での中田氏の臨床の師である脳神経学者のマイケル・レムラー氏は、「あなたは優れた科学者、脳神経科医、哲学者、教師、同僚、そして友人だった。あなたがすべてにおいて『善』だったことは、あなたのことをよく知る私が証言する。私はトム(=中田氏の愛称)という光が亡くなることへの怒りで満ちている」との追悼メッセージを偲ぶ会に寄せた。
偲ぶ会では、中田氏が晩年に執筆した小説「神の遺伝子」が10月下旬に文藝春秋から電子書籍の形で出版される予定であることも紹介された。生前、小説出版の計画について中田氏から聞いていたという宝金氏は「パリのテロ事件をはじめ世界の事件をフォローしながら展開する小説が出るというので、ぜひ読みたいと思っていた。いろいろなメッセージが込められていると思う」と期待感を示した。
「神の遺伝子」は、デジタルコンテンツのための配信プラットフォーム「cakes(ケイクス)」で9月末より連載中。10月下旬に文藝春秋より電子書籍配信予定。
関連書籍
中田力『穆如清風(おだやかなることきよきかぜのごとし)―複雑系と医療の原点』
https://www.jmedj.co.jp/book/search/detail.php?id=520
中田力『フィロソフィア・メディカ2 医療と人類』(電子コンテンツ)
https://health.dlmarket.jp/products/detail/609890