気道に存在する一酸化窒素合成酵素(NOS)には,構成型一酸化窒素合成酵素(cNOS)である神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)と内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)や,炎症性サイトカインなどにより誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)がある
喘息患者の呼気の一酸化窒素(NO)濃度は健常人や慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に比べ高値を示す
呼気NO値を臨床運用する際は,正常上限値が37ppbであり,35ppb以上を「喘息病態あり」と考える
喘息は喘鳴を繰り返すような典型例では診断が容易だが,軽症例,特に咳を主症状とする症例では診断に難渋する場合がある。さらに他疾患,特に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)に合併した喘息の診断も,人口構造の高齢化により問題となってきている。本稿では,日本アレルギー学会刊行の「喘息予防・管理ガイドライン2015」の喘息診断の概略を解説し,最近注目されている呼気一酸化窒素(nitric oxide:NO)測定の喘息診断における意義について述べる。
喘息は「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義される1)。この気道炎症には,好酸球,好中球,リンパ球,マスト細胞などの炎症細胞に加えて,気道上皮細胞,線維芽細胞,気道平滑筋細胞などの気道構成細胞,および種々の液性因子が関与している。また,気道炎症や気道過敏性亢進によって,気道狭窄が自然に,あるいは治療により大きな可逆性を示す1)2)。
こういった喘息の定義に基づき,喘息の診断には表1のような目安が挙げられる1)。具体的には,発作性の呼吸困難や喘鳴などの臨床症状,気道可逆性(呼吸機能検査における気管支拡張薬に対する反応性)や気道過敏性検査(気道収縮薬による反応性)といった生理学的検査を組み合わせて行うが,喘息の本態である気道炎症(通常,好酸球性)の検出は特異度の高い診断法である。
従来,気道への好酸球浸潤は喀痰好酸球を測定することで行われてきたが,喀痰はすべての喘息患者で得られるわけではなく,さらに喀痰採取や好酸球染色に手間を要するなどの制限があり,一般臨床での施行は困難であった。こういった状況の下,登場したのが呼気NO濃度測定検査である。
残り2,611文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する