日本医師会の横倉義武会長は5日、都内で開かれた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」(会長:髙久史麿 地域医療振興協会会長)で講演し、西洋を含む世界各国が医療用漢方の利用を進めている中で、「我が国において漢方薬を医療保険から外すことは国際化の流れに逆行している」と述べた。財務省などが主張している市販品類似薬の保険給付外しに改めて反対した形だ。
講演で横倉氏は、日医総研の研究成果などに基づき、慢性硬膜下血腫の術後療法における漢方薬(五苓散または柴苓湯)の使用割合が近年3割近くまで上昇しており、漢方薬使用例では再手術率が下がったといった有効例の報告もあると強調。さらに、国内外の臨床研究により大建中湯などの製剤でエビデンスの蓄積が進みつつあることにも言及し、「有効かつ治療に必要な医薬品は保険給付から外すべきではない」との見解を示した。
保険給付以外に医療用漢方が直面している課題としては、薬価の維持と原料生薬の中国依存を挙げ、「国内で安定的に利用できるようにすることが大事」とした。
国際疾病分類第11版(ICD-11)に漢方を含む伝統医学の章が新設されたことについては、「『証』という共通言語により、伝統医学の考え方を取り入れた臨床研究やデータの国際比較が可能になる」と述べ、漢方のエビデンス構築に向けた研究の発展に期待を示した。
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