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腟前壁を長く切除した後の膀胱機能について

No.4948 (2019年02月23日発行) P.56

加藤友康 (国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科科長)

中田真木 (三井記念病院産婦人科医長)

登録日: 2019-02-21

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  • 腟癌や子宮頸癌の腟進展例には,腟壁を長く切除します。時には膀胱三角部の背側を剝離します。この場合,尿道や膀胱三角部の背側の支持組織が脆弱になり,術後の膀胱機能低下が危惧されますが,いかがでしょうか。(機能低下がみられるとしたら)子宮頸部側の腟壁切除がどのくらいになれば,例えば腟下1/3まで切除するような場合は,術後QOLからみて膀胱合併切除を勧めたらよいでしょうか。
    三井記念病院・中田真木先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    加藤友康 国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科科長


    【回答】

    【尿禁制を失わないために,尿道の後ろにある軟部組織を残すことが必要】

    膀胱の一部と尿道は前腟壁に接しています。膀胱や尿道の支持不全が尿のもれやすさや排出しづらさに関与する疾患には,骨盤臓器脱があります。骨盤臓器脱では,腹腔内の圧力によって膀胱や尿道が挙筋裂孔内に押し込まれてぐらつきや変形を伴い,支持不全は下部尿路機能障害の発生に関与します。

    進展した腟癌や子宮頸癌で腟壁を合併切除すると,下部尿路機能障害が起こることが知られています。神経温存術式により術後初期の排尿困難は軽減されましたが,術後長期的に尿もれが高度化する傾向は今でも明らかです。尿もれが高度化する機転は,支持組織の離断や損傷だけでなく,むしろ,近隣の組織を多量に切除したことによる尿道の締まりの悪さや,骨盤神経の機能低下による腹圧排尿機転への促通効果が関与しています。

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