日本循環器学会は17日、「心不全療養指導士」認定制度を創設すると発表した。心不全の発症・重症化予防の療養指導に従事する医療専門職の質の向上を図る。2020年秋以降に試験を実施し、2021年春にも心不全療養指導士が誕生する見通し。
心不全を巡っては、団塊の世代に次いで人口の多い団塊ジュニア世代が高齢者となる35年をピークに、患者数・死亡者数増加、医療費増大、病床不足、医師不足などで医療体制が疲弊する「心不全パンデミック」に陥ると危惧されており、対策が求められている。
同日の会見に出席した小室一成代表理事は心不全について、入退院を繰り返し徐々に増悪するという経過を辿ることから、発症後の再入院を防止するため、「急性期から回復期・慢性期のシームレスな診療体制が求められている」と説明。体制構築の課題となっているのが、専門医とかかりつけ医、訪問看護、リハビリテーションなど多機関との連携だとして、心不全療養指導士の育成により、チーム医療の質の向上につなげたい考えを示した。
概要を説明した筒井裕之常務理事によると、心不全療養指導士は多職種が基本的な共通の知識を持って療養指導を行うための基盤的な資格。心不全の知識の提供やセルフモニタリングの指導、内服・栄養管理など包括的な療養指導を行うという。
受験者は、同学会の会員・準会員のうち、看護師、保健師、理学療法士など主に対面で患者を指導する機会のある職種が対象。受験時に心不全療養指導に従事していることや症例報告5例の提出を求める。学会のe-ラーニングの修了証の取得も条件とした。資格取得後は5年毎に更新が必要となる。
筒井氏は、初年度となる2021年の認定者数について、3700名を目指すと説明。クリニックや病院、在宅など幅広い場所での活動を想定しているとした。
筒井氏はまた、脳卒中・循環器病対策基本法が昨年制定されたことを受け、「医療提供体制の整備に向けた議論の中でも、心不全療養指導士の職種が位置付けられることに期待している」と述べた。