私が医師になりたての時代に呼吸器内科はなく、全内科を診療分野としながら呼吸器の臨床経験を積みました。当然外科も胸部から乳腺・腹部までを一診療科として対応していた時代でした。近年は内科のサブスペシャリティー化が進み、比較的早くに臓器別専門医の選択の道が求められるようになったため、呼吸器内科を名指しした紹介が多くなりました。
当院は群馬県という首都圏にあって、やや医師不足の地域であり、高度救急救命センターからがん診療・緩和医療まで展開するベッド数592床の総合病院ですが、呼吸器内科医も不足しているのが現状です。その中で、肺炎を中心とする感染症から肺癌の診断と治療、喘息やCOPD、そしていまだ標準治療の確立していない間質性肺炎など、多種多様な呼吸器疾患の紹介を受け、日夜多数の入院患者さんを前に奮闘しています。
呼吸器疾患の診断と言えば胸部X線写真が基本ですが、その後の精査に大きく貢献しているのはCTスキャンです。近年の高性能ヘリカルCTは、その画像の質において胸部X線とは雲泥の差があるため、多くの病変において非常に微細な情報を短時間に提供してくれますが、予想に反し診断に悩む病変に遭遇することもあります。
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