【質問者】
青木 茂 横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センター准教授
【子宮内遺残物の有無と仮性動脈瘤に注意が必要で,子宮内容除去をいきなり行わないように注意する】
分娩後24時間以降の性器出血がsecondary PPHで,その原因は以下の4つです。①子宮内への胎盤や血液凝固塊の貯留,②胎盤成分が子宮壁に固着し,そこへ多量の血液が流れ込んでいる状態(hyper-vascular retained product of conception:hyper-vascular RPOC),③胎盤ポリープ,④子宮動脈仮性動脈瘤(uterine artery pseudoaneurysm:UAP)。
以下,①~④の状態について説明します。
①子宮内への胎盤や血液凝固塊の貯留
分娩時に胎盤・卵膜・血液塊が残存すると,本来起こるべき子宮収縮(子宮復古)がうまくいかず,胎盤剝離部血管の収縮不全が起きて出血してきます。「後期分娩後異常出血では,まず子宮内容物を除去してみる(子宮内容除去術)」のが産科医の常識でした。ところが,②~④の病態が知られて,子宮内容除去術は慎重にすべきだと理解されてきています。
②hyper-vascular RPOC
遺残胎盤が子宮壁に固着し,豊富な血流が胎盤とその基底部子宮内膜・筋層に流れ込んでいる状態です。全破綻すれば大出血します。
③胎盤ポリープ
遺残胎盤部分が増殖して子宮内にポリープ状に突出します。血流が豊富で,それが破綻して出血します。
④UAP
近年,注目されてきた病態です。帝王切開や分娩で子宮動脈外膜が損傷されます。動脈内圧の力に打ち勝てず,この部分が「瘤」を形成してきます。瘤の壁は一部破綻しますが,周囲結合組織や血液塊がその都度,この破綻部に「蓋をして」いるのですが,瘤が大破綻すると大出血します。
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