肺癌に特異的な症状は少ないため,肺癌の可能性を疑うことが重要である
喫煙歴の聴取は治療選択肢にも関わる重要事項である
各種画像検査の特徴を理解し,迅速に病期決定から治療方針決定へ結びつける必要がある
肺癌は日本人におけるがん死の第1位である。難治がんのひとつとして知られているが,近年は早期発見と手術の低侵襲化,化学療法の目覚ましい進歩により治療成績は向上している。
当院はがん専門病院であるため,検診や他疾患の精査を契機に肺癌が疑われて紹介となる場合が大部分を占める。そのため,本稿では肺癌の疑いにて当院へ紹介となった場合を想定し,初診からの検査の進め方と病期の決定についての流れを,図1に示し,その根拠について「肺癌診療ガイドライン2018年版」をもとに述べる1)。
紹介となった場合を含め,当院を受診するまでの病歴確認は必須であるが,特に注意して確認している項目について述べる。
手術適応となるような症例は特に,検診を契機に発見される場合も多く,大部分は無症状である。しかし,肺癌の切除率は約30~40%とされており,何らかの症状を契機に肺癌が疑われることは少なくない。咳嗽・喀痰・血痰・喘鳴・発熱・呼吸困難・胸痛・嗄声・体重減少・全身倦怠感といった肺癌に非特異的な症状が一般的であるが,これらの症状が持続する場合には肺癌を疑う必要がある。また,比較的肺癌を疑いやすい症状としては,肺癌の局所浸潤に伴う上大静脈症候群やホルネル症候群が挙げられる。肺癌の局所浸潤に伴う症状について表1にまとめた2)。
肺癌が遠隔転移することにより生じる症状もある。肺癌が転移しやすい場所として骨・脳・肝臓・副腎・リンパ節等がある。骨転移では転移部の疼痛や,椎骨転移が脊髄腔内へ進展し,麻痺症状を呈する場合もある。脳転移では四肢麻痺,言語障害,意識障害等の中枢神経症状が生じうる。肝転移では黄疸を生じる場合もある。その他,転移リンパ節が腫大し周囲臓器を圧排することで肺癌の局所浸潤と同様の症状をきたす場合もある。
ほか,肺癌の10~20%に腫瘍随伴症候群が合併するとされる。中でも小細胞肺癌に合併する場合が多い。主な腫瘍随伴症候群については表2にまとめた2)。画像所見よりも,腫瘍随伴症候群による症状が先行する場合もあり,念頭に置いておく必要がある。