(岐阜県 K)
【蛋白─エネルギー栄養障害が起こりがちのため,看護・栄養に加え,呼吸器リハが必要】
COPDの栄養状態において,有名なものにマラスムス(marasmus)とクワシオルコル(kwashiorkor)があります。これらはいずれも,蛋白─エネルギー栄養障害(protein-energy malnutrition:PEM)という炎症による蛋白欠乏の状態を反映しています。以下,それぞれについて説明します。
COPDや慢性腎臓病(CKD)といった慢性炎症による緩徐な栄養障害です。代償性に同化を止め,異化が亢進して筋肉組織が崩壊して,アミノ酸が血中に供給されるためアルブミン値が保たれている状態です。結果的には筋肉量の減少が進むので,浮腫などを勘案した上での体重やBMIの減少も補助となりますが,筋力・量を歩行速度や握力,下腿周囲径といった指標を使用することでサルコペニアとして検出することができます。
生体電気インピーダンス(bioelectrical impedance analysis:BIA)ないしは二重エネルギーX線吸収法(dual-energy X-ray absorptiometry:DX A)を用いて筋肉量測定を行うことが理想ですが,過去の研究結果からは,下腿周囲径などを代用することも有用とされており1),外来では,国立長寿医療研究センターが提唱しているサルコペニアの簡易スクリーニング〔国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(National Institute for Longevity Sciences-Longitudinal Study of Aging:NILS-LSA)〕2)が簡便です(図1)。
重度の熱傷や敗血症といった高度の栄養障害のため,筋組織によるアミノ酸供給の余裕もなくアルブミン値が下がって現れます3)。
看護師,栄養士に加えてリハビリテーションを併用することでいっそう効果的なアプローチができます。安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure:REE)の1.5倍程度の栄養が必要となるため,経口補助栄養剤(oral nutrition supplementation:ONS)などの補食の工夫が必要です。
呼吸器リハは,COPDのあらゆるステージにおいて,導入によって患者のQOLを改善することが示されています。リハを継続的に行うことで労作時呼吸苦などの早期症状から増悪を早期発見し,適切な在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)導入を行うことによって予後も改善されます。また,リハ後の経口補助栄養剤の併用によって,体重や筋力の増加を図り,グレリン不足など様々なホルモンやサイトカインの影響による食欲低下に対して補中益気湯や六君子湯といった漢方薬を証に合わせて使用することも有用です4)5)。
抑うつの合併も多いため,早期発見によって認知行動療法を行い,抗うつ薬を投与すること,咬合不全や入れ歯の破損など歯の問題に対しての歯科介入をすることなど,多職種の介入によって,様々な原因を早期発見・改善することが期待されます(図2)。
【文献】
1) Rolland Y, et al:J Am Geriatr Soc. 2003;51(8): 1120-4.
2) 下方浩史, 他:日老医誌. 2012;49(2):195-8.
3) Franco VH, et al:Trop Pediatr. 1999;45(2):71-5.
4) Arai M, et al:Hepatogastroenterology. 2012;59 (113):62-6.
5) Miki K, et al:PLoS One. 2012;7(5):e35708.
【回答者】
小坂鎮太郎 練馬光が丘病院救急集中治療科/ 総合診療科