QT延長症候群(LQTS)はQT延長を認め,多形性心室頻拍(TdP)や心室細動(VF)の発生により失神や突然死を引き起こす症候群である
LQTSの診断および治療方針決定のためにQT間隔の正確な評価が重要であり,接線法などを用いて用手的にQT計測するのが望ましい。先天性LQTS患者ではQTcが変動し,最も長いQTcがその予後と関連するため,定期的に心電図評価を行うことが望ましい
正常者とLQTSのQTcは互いにオーバーラップし,LQT1の36%,LQT2の19%は安静時QTcが正常あるいは境界域を示す。そのような潜在性LQTSの診断精度を高めるために立位負荷試験,運動負荷試験,カテコラミン負荷試験などが有用である
先天性LQTSリスクスコア≧3.5,先天性LQTS関連遺伝子に明らかな病的変異あり,QTc≧500msec,説明のつかない失神を認め,QTc 480~499msecを示す,のいずれかを認める場合に先天性LQTSと診断しうる
臨床的に先天性LQTSと診断された症例の75%に,二次性LQTSの約30%にイオンチャネルの病的遺伝子変異が認められる
QT延長症候群(long QT syndrome:LQTS)はQT延長を認め,多形性心室頻拍(torsades de pointes:TdP)や心室細動(ventricular fibrillation:VF)の発生により失神や突然死を引き起こす症候群である。先天性LQTSの有病率は,無症候性を含めると2000人に1人である。先天性LQTSのうちRomano-Ward症候群はその99%以上を占める。常染色体顕性遺伝形式であり,子どもは罹患した親から50%の確率で異常アレルを受け継ぐ可能性があり,原則として男女間で罹患率に差はない。先天性LQTSではこれまで15種類の遺伝子の変異が報告されている(表1)1)。遺伝子変異は臨床的にLQTSと診断された症例の75%に認められ,同定された変異の90%を占める遺伝子がKCNQ1(LQT1,30~35%),KCNH2(LQT2,25~30%),SCN5A(LQT3,5~10%)である。
先天性LQTSは遺伝性と特発性が含まれ,二次性LQTSは薬物,電解質異常,徐脈,その他の原因によって発症する(表2)1)。