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(1)QT間隔の測定法とQT延長症候群の診断の流れ[特集:QT延長症候群疑い例への対応]

No.4992 (2019年12月28日発行) P.20

林 研至 (金沢大学大学院医薬保健学総合研究科医学専攻循環器内科学研究分野)

登録日: 2019-12-30

最終更新日: 2019-12-25

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QT延長症候群(LQTS)はQT延長を認め,多形性心室頻拍(TdP)や心室細動(VF)の発生により失神や突然死を引き起こす症候群である

LQTSの診断および治療方針決定のためにQT間隔の正確な評価が重要であり,接線法などを用いて用手的にQT計測するのが望ましい。先天性LQTS患者ではQTcが変動し,最も長いQTcがその予後と関連するため,定期的に心電図評価を行うことが望ましい

正常者とLQTSのQTcは互いにオーバーラップし,LQT1の36%,LQT2の19%は安静時QTcが正常あるいは境界域を示す。そのような潜在性LQTSの診断精度を高めるために立位負荷試験,運動負荷試験,カテコラミン負荷試験などが有用である

先天性LQTSリスクスコア≧3.5,先天性LQTS関連遺伝子に明らかな病的変異あり,QTc≧500msec,説明のつかない失神を認め,QTc 480~499msecを示す,のいずれかを認める場合に先天性LQTSと診断しうる

臨床的に先天性LQTSと診断された症例の75%に,二次性LQTSの約30%にイオンチャネルの病的遺伝子変異が認められる

1. QT延長症候群(LQTS)とは

QT延長症候群(long QT syndrome:LQTS)はQT延長を認め,多形性心室頻拍(torsades de pointes:TdP)や心室細動(ventricular fibrillation:VF)の発生により失神や突然死を引き起こす症候群である。先天性LQTSの有病率は,無症候性を含めると2000人に1人である。先天性LQTSのうちRomano-Ward症候群はその99%以上を占める。常染色体顕性遺伝形式であり,子どもは罹患した親から50%の確率で異常アレルを受け継ぐ可能性があり,原則として男女間で罹患率に差はない。先天性LQTSではこれまで15種類の遺伝子の変異が報告されている(表1)1)。遺伝子変異は臨床的にLQTSと診断された症例の75%に認められ,同定された変異の90%を占める遺伝子がKCNQ1(LQT1,30~35%),KCNH2(LQT2,25~30%),SCN5A(LQT3,5~10%)である。

先天性LQTSは遺伝性と特発性が含まれ,二次性LQTSは薬物,電解質異常,徐脈,その他の原因によって発症する(表2)1)

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