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フェルティ(Felty)症候群[私の治療]

No.5011 (2020年05月09日発行) P.58

石井智徳 (東北大学医学部血液・免疫科特任教授)

登録日: 2020-05-07

最終更新日: 2020-04-30

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  • 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の経過中に,免疫異常による好中球減少症をきたす症候群である。RAに好中球減少,脾腫を伴う病態でRAの1%以下にみられ,多くの場合,活動性の高いRAにおいて10年以上の長い経過の後に発症し,進行すると重篤な細菌感染症のリスクが高まり,注意深い対応が必要となる。

    ▶診断のポイント

    RAの経過中に好中球が減少する病態はかなり多いため,鑑別診断が重要となる。特に,頻度が高く大きな問題となるのは薬剤性であり,RA治療に頻用される薬剤であるメトトレキサート(MTX),サラゾスルファピリジン,トシリズマブは,しばしば好中球を減少させる薬剤である。鑑別診断に重要なもう1つの疾患群は血液系の腫瘍性疾患で,骨髄異形成症候群など比較的頻度の高い疾患に加え,大型顆粒リンパ球(large granular lymphocyte:LGL)が腫瘍性に増殖する疾患であるLGL白血病が最近注目を集めている。これらの疾患の鑑別が重要であり,血液疾患専門医に骨髄穿刺をはじめとした血液学的検討を依頼する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    フェルティ症候群では,好中球減少が原因と考えられる重症細菌感染症により,25%が診断から5年以内に死亡するとする報告もある。本症候群の好中球減少を改善する治療法は確立されていないが,病態にはRAに伴う自己免疫機序が関わっていることが報告されており,治療は原則的にRAに対するものを踏襲して行われている。実際に有効性が報告されている治療法もあるが,稀な疾患であり,すべてが小規模でエビデンスレベルが低い報告である。具体的には,免疫機序を制御する治療としては,RA治療のアンカードラッグとされるMTXによる加療が比較的有効性が認められるとするエビデンスが多く,第一選択とすべきものである。一方で,MTXより関節炎に対する有効性が高いとされる生物学的製剤,特に最も頻用される抗TNFα療法は有効性が期待できないと報告されている。わが国では保険適用にはなっていないが,RAに対する有効性が確認されている生物学的製剤の中でリツキシマブは好中球の減少に対する有効性があったとする報告が散見されている。また,外科的治療として脾摘が有効であったとの報告があるが,脾摘による有害事象なども考慮に入れると,内科的加療が奏効しない症例に限定して行うべきものと考えられる。好中球が減少している際に行われる支持療法としては,原因にかかわらず行われる好中球減少症に対する標準的な支持療法が施行される。

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