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頸管無力症[私の治療]

No.5016 (2020年06月13日発行) P.52

桑原慶充 (日本医科大学女性診療科・産科准教授)

登録日: 2020-06-11

最終更新日: 2020-06-09

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  • 外出血や子宮収縮などの切迫流早産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態をいう1)。子宮頸管の構造的・機能的脆弱性により,妊娠を維持する子宮のゲートキーパーとしての機能が損なわれている状態である。深い円錐切除術,既往分娩における頸管裂傷,頸管拡張術の既往など後天的要因が原因となるが,明らかな器質的異常が存在しない場合もある。妊娠中期以降にみられる反復流早産の原因のひとつであり,規則的な子宮収縮を伴う切迫早産とは区別される。

    ▶診断のポイント

    明確な診断基準はなく,妊娠分娩歴の詳細な聴取,内診,腟鏡診,経腟超音波検査より総合的に判断する。病態が複合的な場合もあり,既往流早産で子宮内感染を認めていても,無症候性の胎胞形成などの臨床経過を重視して積極的に疑っていく。流早産既往にかかわらず,現行妊娠で切迫流早産の徴候なしに妊娠中期までに子宮口の開大や胎胞形成を認める場合は本症と診断される。子宮頸管長の短縮度は早産リスクと相関し,わが国の大規模調査では,妊娠20~24週における経腟超音波検査にて子宮頸管長が30mm未満,25mm未満,20mm未満の場合の早産率は,それぞれ23.6%, 47.1%, 75.0%であったと報告されている2)。したがって,妊娠中期の経腟超音波検査にて頸管長短縮傾向を認める場合は,本症を念頭に置いた慎重なフォローアップが必要である。腹圧負荷(プレッシャーテスト)で頸管長が動的に短縮する場合や,内子宮口を超えて卵膜が陥入する場合は,よりリスクが高いと認識する。

    ▶私の治療方針・治療の組み立て方

    【既往より本症が推定されるとき】

    原則として,次回妊娠時には妊娠12週以降の早期に予防的経腟的子宮頸管縫縮術を行う。予防的な経腟的子宮頸管縫縮術施行後の流早産既往を有する症例や,深い円錐切除術による子宮腟部欠損など,解剖学的に通常の経腟的子宮頸管縫縮術が困難な症例に対しては,筆者らは妊娠初期に開腹による子宮峡部頸管縫縮術を行っている。この手術を非妊娠時に行っている施設や,開腹以外のアプローチとして,腹膜開放式頸管縫縮術や腹腔鏡下子宮峡部縫合術を選択している施設もある。予防的子宮頸管縫縮術を行わない場合は,妊娠14週頃より1~2週間ごとに腟鏡診・内診・子宮頸管長の計測による注意深い経過観察を行い,妊娠24週までに頸管長短縮が進行する場合は,顕性の感染や子宮収縮を認めなければ,原則として治療的子宮頸管縫縮術を選択する。

    【現行妊娠で初めて本症が疑われるとき】

    妊娠20~24週の経腟超音波検査で子宮頸管長が30mm未満であった場合,頸管無力症を念頭に1~2週ごとに頸管長を計測する。頸管長が20mm以上25mm未満で,進行性に短縮する場合は,入院あるいは自宅での安静を指示する。頸管長が20mm未満の場合や,胎胞形成や子宮口の開大を認める場合は可及的速やかに入院管理とする。妊娠24週までに頸管長が25mm未満となった場合,顕性の感染や子宮収縮を認めなければ,治療的子宮頸管縫縮術を考慮する。

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