妊娠22週未満に妊娠が終了する状態を流産という。妊娠12週未満で生じる場合を早期流産,12週以降で生じる場合を後期流産と分類し,その両者は背景原因や臨床的な対応が異なる。自然の経過で発症するものを自然流産,人工的な妊娠の中断を人工流産という。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が,尿中あるいは血中に確認された後に胎嚢の確認に至る以前の段階で妊娠が終了する場合を生化学的妊娠と呼び,流産とは区別する。自然流産の発生頻度は約15%であり,初期流産の60~70%程度は胚の染色体異常に起因しており,女性の年齢上昇に伴い胚の染色体異常の発生リスクは増加するため,流産自体の発生頻度も高年齢女性の妊娠では上昇する。染色体異常以外の原因として感染,頸管無力症などがある。
出血,腹痛を伴い妊娠組織が子宮外へ排出開始している段階では,容易に診断される。一方で,繰り返しの超音波検査で子宮内の妊娠進行が停止している場合には,妊婦の自覚症状がなくとも流産と診断され,そうした状態を稽留流産と呼ぶ。胎嚢の確認後2週以上経過しても胎児心拍が確認できない場合や,いったん確認された胎児心拍が消失した場合がそれに該当する。
流産の診断確定後には,妊娠終了のために子宮内組織を排出させることが必要となるが,待機的な管理と手術・分娩による介入的方法がある。待機的管理では出血が多量となる懸念がある場合や,感染を生じている場合には介入的方法を選択する。
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