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WHI研究以前と以後のホルモン補充療法の動向

No.5025 (2020年08月15日発行) P.48

寺内公一  (東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授)

登録日: 2020-08-14

最終更新日: 2020-08-06

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【効果が期待される集団でむしろ使用が減少している】

ホルモン補充療法(HRT)に関する史上最大の臨床研究Women’s Health Initiative(WHI)の予備的結果が2002年に公表され,観察研究の蓄積から期待された心血管疾患予防効果がないことが明らかになると,HRTは世界中で逆風にさらされることになった。15年間の時を経て,60歳以上の女性が70%以上を占めるWHI試験の特殊性が再認識されるとともに,60歳未満で開始されたHRT(=観察研究と同じ)が心血管疾患予防を含む様々なベネフィットをもたらすことが確認され1),専門家間ではHRTへの評価が完全に元に戻った状況である。

しかし,WHIの残した爪痕が大きいことを実感させられる報告も引き続き行われている。米国の多民族女性コホートとして有名なStudy of Women’s Health Across the Nationの参加者3018人に関して,1996〜2013年までのHRTの開始・継続・中止の状況を調査した2)。WHI前後を比較した場合,HRTの開始は8.6%から2.8%に低下し,継続は84.0%から62.0%に低下した。WHI後の中止は,ホットフラッシュ・発汗などの症状が「ない」「たまに」「しばしば」の群でそれぞれ18.6%,20.8%,27.6%と,HRTの効果が期待される集団にむしろ中止が多くみられた。また,WHI後の中止の理由では,メディアの報道・副作用に対する懸念が上位を占めた。

HRTに関して,今後も科学的に正しい情報を発信していくことの重要性が再認識された。

【文献】

1) Manson JE, et al:JAMA. 2017;318(10):927-38.

2) Crawford SL, et al:Menopause. 2018;26(6): 588-97.

【解説】

寺内公一 東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授

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