株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

腸回転異常症[私の治療]

No.5046 (2021年01月09日発行) P.36

渡辺稔彦 (東海大学医学部小児外科学教授)

登録日: 2021-01-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 腸回転異常症は,胎生期の中腸の回転と固定という過程が障害されるため,小腸を固定するトライツ靱帯から回盲部までの長い腸間膜の根部が形成されず,十二指腸・小腸全域・上行結腸から横行結腸の一部が十二指腸の基部に収束するという解剖学的異常が発生する。この時,結腸と後腹膜との間に線維性膜様物(Ladd靱帯)が形成され,これにより十二指腸は壁外性に前方から固定されることで閉塞してイレウス症状をきたす。十二指腸と結腸は腸間膜の狭い基部で固定されるために捻転を起こしやすく,捻転の程度により症状が持続的,または間欠的に出現する。捻転が高度になると絞扼性イレウスとなり,広範囲の腸管が壊死に陥り,重篤な短腸症候群の原因となりうる。腸回転異常による中腸軸捻転の90%は生後1年以内に発症し,50%以上は新生児期に発症する。特に,生後1週間以内に胆汁性嘔吐で発症する症例が多い。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    発症年齢によって病態が異なり,新生児期は胆汁性嘔吐と血便,ショック状態を呈し,絞扼性イレウスをきたしやすい。乳幼児症例では,間欠的な腹痛と嘔吐がみられ,腸重積との鑑別を要することがある。年長児や成人では症状は腹痛や嘔吐,便秘,血便,貧血,閉塞性黄疸,十二指腸潰瘍,乳び腹水,蛋白喪失性胃腸症といった慢性症状を呈し,診断に難渋することもある。

    【身体・検査所見】

    血便,腹部膨満,ショック状態を呈するときは軸捻転による絞扼性イレウスが疑われる。

    腹部単純X線写真は,発症時期,十二指腸閉塞の有無,絞扼性イレウスの有無などにより様々である。十二指腸閉塞ではdouble bubble sign様となるが下部消化管にも少量のガスがみられることが多い。絞扼性イレウスの際は,拡張した小腸ループはgasless領域として認められることがある。

    超音波検査では,カラードプラー検査が有用で,上腸間膜動脈(SMA)を中心とした血管の回転像(whirlpool sign),SMAと上腸間膜静脈(SMV)の位置関係が逆転している所見があれば診断的価値が高い。同時に腸管の血流や腹水の有無,液体の貯留した拡張腸管を確認することができる。

    上部消化管造影では,十二指腸が水平脚でなく右側を下方に小腸へ向かいトライツ靱帯が形成されていない。小腸の捻転として,渦巻き状所見(corkscrew sign)や十二指腸の閉塞所見(beak sign)は軸捻転を示唆する。

    注腸造影では,結腸が左半側に変位し,盲腸が右上腹部に位置すれば腸回転異常と判断する。造影CTは,新生児では被ばくの問題や腎機能が未熟なため,通常施行しない。

    血液・生化学検査では,白血球数増加あるいは減少に加え,血小板減少を伴えば,絞扼性イレウスによる敗血症性ショックが疑わしい。

    残り1,149文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top