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切迫流産・切迫早産[私の治療]

No.5049 (2021年01月30日発行) P.40

大槻克文 (昭和大学江東豊洲病院産婦人科教授/周産期センター長)

磯崎 遥 (昭和大学江東豊洲病院薬剤部)

登録日: 2021-02-02

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  • 切迫流産および切迫早産の原因は多様であるが,下腹部痛と性器出血を主訴とする。初期の切迫流産とは「胎児が子宮内に残っており,流産の一歩手前である状態」を言う。「流産」は妊娠継続不可能であるが,「切迫流産」は妊娠継続できる可能性がある。妊娠12週までの切迫流産に対して流産予防に有効な薬剤はないと言われているが,絨毛膜下血腫がある切迫流産では安静が有効との報告もある。一方,「切迫早産」の定義は「妊娠22週以降37週未満に下腹痛(10分に1回以上の陣痛),性器出血,破水などの症状に加えて,外側陣痛計で規則的な子宮収縮があり,内診では子宮口開大・頸管展退などBishop scoreの進行が認められ,早産の危険が高いと考えられる状態」とされている。
    分娩週数が早い症例ほど新生児死亡率および新生児合併症の頻度や程度が高くなるため,適切な診断と治療により,早期の早産をいかに減少させるかが課題である。

    ▶診断のポイント

    当然のことであるが,現時点での妊娠週数の確認(予定日の確認)に加え,切迫流産や切迫早産の既往,後期流産や早産既往歴の有無,子宮手術の既往の有無(筋腫核出術,帝王切開など),規則的な子宮収縮(腹痛)の有無,発熱や性器出血の有無の確認が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず,既往妊娠歴がある場合には前回の妊娠に関して後期流産や早産歴,難産や頸管裂傷(損傷)の既往,中期中絶の既往の有無など詳細に確認する。流産歴がある場合には妊娠歴・既往疾患・合併症などを確認し,自然流産の回数や流産となった妊娠週数を確認する。原因不明の流産歴がある場合,頸管無力症の可能性がある。

    確定診断のためには,(1)規則的な子宮収縮,(2)内診・視診による子宮口開大傾向または経腟超音波による頸管長短縮傾向(性器出血は伴わないこともある)の確認が必要である。ただし,①常位胎盤早期剝離(常に念頭に置く必要があるが,鑑別が困難な例もしばしば存在する),②部分前置胎盤や低置胎盤(経腟超音波などで鑑別),③切迫子宮破裂(子宮筋腫核出術や帝王切開などの子宮手術既往の有無),④子宮筋腫変性(子宮筋腫の部位に一致して圧痛あり,変性の状況も観察),⑤卵巣腫瘍(茎捻転)(原則として卵巣腫瘍の部位に疼痛部位が存在。部位については子宮の増大に伴って変化),⑥虫垂炎や腎盂腎炎といった他臓器の炎症性疾患(臨床所見や検査所見などで鑑別。他科への相談を厭わないこと)については常に鑑別が必要である。
    なお,子宮収縮抑制薬の使用によっても抑制困難な規則的な子宮収縮と子宮口開大や怒責感を認める場合,流産や早産児の娩出に備える必要がある。

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