治療抵抗性高血圧とは,十分な生活習慣の改善を行った上で,なおかつ利尿薬を含むクラスの異なる3剤(Ca拮抗薬,ACE阻害薬,ARB)を用いても降圧目標値に下がらないものと定義されている。しかし実際には副作用や精神的アレルギー反応を呈する例も少なくなく,これらの症例も治療抵抗性高血圧の範疇に入る。
このような治療抵抗性高血圧に対して,10年ほど前からドイツやオーストラリアなどから腎除神経術(renal denervation:RDN)が有効であるとの臨床試験の報告が出始めていた。
RDNは,腎動脈に挿入したカテーテルを用いて血管内膜側から発生させた高周波エネルギーにより外膜側の腎神経を焼灼して,中枢への求心路を遮断し,中枢から心臓や血管への遠心刺激を抑制することで降圧をめざしたデバイス治療の1つである。
その理論を臨床試験で実証すべく開始されたのが一連のSymplicity HTNシリーズである。第一弾のHTN-1研究1)は,薬物治療抵抗性高血圧症88例が参加したオープン試験であり,診察室血圧で-32/-14mmHgの降圧がみられた。しかし本研究では対照群を設定していない上,携帯型自動血圧計による評価は行われず,真の有効性という結論を導くには時期尚早であった。
続いて行われたHTN-2研究2)では,従来治療継続群を対照群に設定して,薬物治療抵抗性高血圧患者にRDN治療施行群とのランダム化試験を行った。その結果,対照群では血圧変化はみられなかったのに対して,RDN治療群は診察室血圧で-32/-12 mmHgと著明な効果が認められた。半数の症例で実施された24時間血圧でもRDN群は-11/-7mmHgと,顕著ではないものの有意な低下を示した。この結果を受けてヨーロッパではRDNを正式な治療法として承認する国も出てきた。しかし高血圧症例では手技を行ったというメンタル効果で血圧が下がる場合もあり,本当の有効性を証明するためには,偽手術(sham operation)群を対照とする必要があった。
そこで,偽手術群を設定して行われたのが,HTN- 3研究3)である。本試験の結果は,案の定一次エンドポイントである6カ月後の収縮期血圧は,RDN群で-14±24mmHg,偽手術群-12±26mmHgで有意差がみられず,24時間血圧においてもやはり降圧度に有意差はみられなかった。