多胎妊娠は早産,胎児発育不全,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,先天異常などのリスクが,単胎妊娠に比して上昇するハイリスク妊娠である。また,多胎妊娠においては膜性診断が重要であり,双胎妊娠の場合には,二絨毛膜二羊膜双胎,一絨毛膜二羊膜双胎,一絨毛膜一羊膜双胎にわかれる。一絨毛膜双胎は,胎盤上の吻合血管や両児の専有面積のアンバランスなどから,双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS),一児発育不全(selective intrauterine growth restriction:sIUGR),トラップシークエンス(twin reversed arterial perfusion sequence:TRAPs)などの特徴的な合併症を引き起こす。また,それらが原因で一児死亡をきたした場合は,もう片方の児にも胎児死亡や神経障害などを引き起こす可能性が高くなる。
TTTSは,胎盤上の両児の吻合血管による血流量の不均衡が主な病態で,供血児で羊水過少および受血児で羊水過多が生じることが特徴である。妊娠中期に発症し,未治療の場合は両児ともに胎児死亡,新生児死亡の可能性が高く予後不良である。sIUGRは,胎盤専有面積の不均衡が主な病態であり,一児の発育不全を生じる(日本では小さい児の推定体重が-1.5SD以下,または推定体重の差が25%以上)。臍帯動脈の血流異常や羊水過少が伴うと胎児死亡の可能性が上昇する。TRAPsは,一児は正常であるがもう一児は心臓が無形成もしくは痕跡程度の状態である無心体双胎に生じる。無心体は胎盤との血流循環がないため,本来正常な児がポンプ児となって,臍帯動脈から胎盤上の動脈-動脈吻合血管を介して無心体児に血流が供給される。そのために正常児に心不全を発症する。一絨毛膜一羊膜双胎では,1つの羊水腔に両児が存在するため,臍帯相互捻転により胎児死亡を起こすことがある。
多胎妊娠の膜性診断は妊娠初期の超音波検査で行う。一絨毛膜二羊膜双胎,一絨毛膜一羊膜双胎の場合は,特にハイリスク妊娠として管理を行う。
TTTSはそれぞれが羊水過多かつ羊水過少(最大羊水深度:8cm以上かつ2cm以下)で診断され,Quinteroのstage分類1)により進行度を評価する。sIUGRは小さい児の推定体重が-1.5SD以下,または推定体重の差が25%以上により診断され,臍帯動脈の血流によりtypeが分類されている2)。
Ⅰ:羊水過多かつ過少のみ(最大羊水深度:8cm以上かつ2cm以下)
Ⅱ:供血児の膀胱が確認不可能
Ⅲ:ドップラー異常所見
臍帯動脈拡張期血流の途絶・逆流
静脈管の逆流,臍帯静脈の波動
Ⅳ:胎児水腫
Ⅴ:一児死亡
TypeⅠ:臍帯動脈拡張期血流が正常
TypeⅡ:臍帯動脈拡張期血流が途絶または逆流
TypeⅢ:臍帯動脈拡張期血流が周期的に変動性に正常から途絶,逆流まで変化する
残り688文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する