【質問者】
春日義史 慶應義塾大学医学部産婦人科
【新たな予防・治療法が確立され,周産期管理が飛躍的に向上すること】
はじめに,「細菌叢解析」について概説します。ヒトの場合,様々な組織に常在する細菌群(細菌叢)は,ヒトの代謝や免疫系に関与し,遺伝的背景や年齢・地理的環境・食習慣・生活環境・各種疾患などの違いにも関連すると言われています。従来,細菌叢は培養法によって様々な研究が行われましたが,培養可能な微生物しか研究されませんでした。しかし近年,次世代シークエンサーの登場によって,微生物由来のDNAを網羅的かつ定量的に解析できるようになりました。この方法を用いて国際的な大型プロジェクトが複数立ち上がり,前述のようなヒト常在細菌叢に関する知見が集積されてきました。
周産期領域で常在細菌叢との関連が指摘される主な疾患は,早産・細菌性腟症・絨毛膜羊膜炎(子宮内感染・子宮内炎症)・不妊症・子宮内膜炎などです。これまでの様々な研究によって,不妊症の原因となりうる子宮内膜炎や,早産の原因となりうる細菌性腟症や絨毛膜羊膜炎は,腟内細菌叢との関連が大きいことがわかっており,一部では新しい予防法・治療法の開発も始まっています。
残り647文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する