メッケル憩室は人口の2%程度にあり,回盲弁から40~100cm口側の回腸にみられる。多くは無症状であるが2~20%程度で出血,憩室炎,腸閉塞等を起こす。
大腸憩室は白人に多いが近年日本でも顕著に増加し,特に高齢者では20~40%にみられる。多発傾向があり,多くは無症状であるが30%程度で出血,憩室炎等を伴う。
メッケル憩室,大腸憩室とも出血,炎症,腸閉塞等をきたす場合に治療対象となる。メッケル憩室の合併症は小児に多く,大腸憩室の合併症は成人,特に高齢者に多い。
小児~若年者ではメッケル憩室,成人~高齢者では大腸憩室の疾患を念頭に置く。
急性,無痛性の比較的多量の血便を呈する。造影CTや大腸内視鏡で診断される。出血の勢いが強いとき(例:心拍数/収縮期血圧>1.0)は造影CT(CT angiography)の有用性が指摘されている(英国のガイドライン1))。内視鏡では先端キャップや水浸法などの工夫もあるが,憩室は多発傾向がある上に,大腸憩室出血は自然止血することが多いため,内視鏡では出血点の同定は困難なことが少なくない。造影CTも撮像時点で出血の勢いが弱いと出血点の同定は困難である。
血管造影は診断と治療を兼ねることができる。出血シンチグラフィーが行われることもある。注腸造影は大腸憩室の存在診断には最も有用であるが,出血点の診断はできない。しかし,バリウム注入に一定の止血効果や再出血予防効果が示唆されており,治療を兼ねて行われることもある。
メッケル憩室の存在診断にはCTが主に用いられ,経口造影剤併用も有用であるが,小腸内視鏡(カプセル内視鏡,バルーン内視鏡)も用いられる。小腸造影やメッケル憩室シンチグラフィーも有用なことがある。
大腸憩室炎,メッケル憩室炎は急性の腹痛・発熱例でのCTや腹部エコーで診断される。大腸内視鏡や注腸造影では大腸憩室炎の所見は得られるが,検査そのものが症状を増悪させうるので急性期には推奨されない。メッケル憩室炎では内視鏡の有用性は乏しい。出血,憩室炎とも再発傾向があるので,病歴に応じて必要な検査を選択する。
メッケル憩室は腸重積等による腸閉塞をきたすことがあり,CTが鑑別に有用である。
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