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二次性高血圧症[私の治療]

No.5064 (2021年05月15日発行) P.34

佐藤文俊 (東北大学大学院医学系研究科難治性高血圧・内分泌代謝疾患地域連携寄附講座特任教授)

登録日: 2021-05-12

最終更新日: 2021-05-11

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  • 高血圧症はわが国で最も罹患者が多い疾患であり,推定4300万人と考えられている。特に慢性腎臓病が,超高齢社会の進行とともに国民病と呼ばれるくらいの増加を示し,国民の肥満人口の増加に伴って睡眠時無呼吸症候群(SAS)も増加の一途をたどっているが,二次性高血圧症の存在も高血圧症全体の20%,もしくはそれ以上を占める可能性を認識すべきであろう。二次性高血圧症の中では,原発性アルドステロン症,腎実質性高血圧,腎血管性高血圧が多いが,最近ではSASが高頻度に合併することがわかってきた(各々の稿参照)。本稿では,腎血管性高血圧,原発性アルドステロン症(偽性アルドステロン症を含む),褐色細胞腫/傍神経節腫,クッシング症候群についての鑑別診断法・治療法を述べる。これらの鑑別診断のためには内分泌ホルモン検査と,CT,MRI,123I-MIBGシンチグラフィーなどの画像診断が重要である。二次性高血圧のスクリーニングは,詳細な病歴聴取と身体所見,血液・尿検査による。

    Ⅰ.腎血管性高血圧

    腎血管性高血圧症は,腎動脈の狭窄あるいは閉塞による高血圧症であり,治療抵抗性高血圧や腎機能障害の原因としても重要である。

    ▶診断のポイント

    若年発症高血圧,治療抵抗性高血圧や悪性高血圧,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬使用後の腎機能の増悪,腎機能の左右差,腹部の血管雑音(特に拡張期),夜間多尿,低カリウム血症,脳心血管病の合併等で疑う。まず腎動脈超音波ドップラー検査を行い,腎動脈での収縮期最高血流速度(PSV),腎動脈起始部PSV/腹部大動脈PSV比(renal/aortic ratio:RAR)を計測し,腎動脈PSV>180~200cm/秒,RAR>3.5,狭窄率60%以上の腎動脈狭窄等で診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    腎血管性高血圧の治療は,降圧薬による薬物治療,経皮的腎動脈形成術(PTRA)や外科的バイパス手術による血行再建術,腎摘がある。若年者の線維筋性異形成の腎動脈狭窄ではPTRAが第一選択であるが,中高年の粥状動脈硬化性狭窄ではPTRAの薬物治療に対する優位性は証明されず,腎機能,年齢等個々の患者の病態で治療法を選択する。粥状硬化性病変にはスタチンand/orエゼチミブ,アスピリンも用いる。禁煙,糖尿病での十分な血糖管理も行う。

    ▶治療の実際

    一手目 :コニール®4mg錠(ベニジピン)1回1錠1日2回(朝・夕食後),コバシル®2mg錠(ペリンドプリル)1回0.5錠1日1回から開始して1回2~4mg 1日1回(朝食後),クレストール®2.5mg錠・5mg錠(ロスバスタチン)1回1錠1日1回(朝食後)併用

    二手目 :〈処方変更〉アダラート® CR40mg錠(ニフェジピン)1回1錠1日1~2回(朝食後または朝・夕食後),アジルバ®10mg錠・20mg錠(アジルサルタン)1回1錠1日1回(朝食後),ロスーゼット®HD配合錠(エゼチミブ10mg/ロスバスタチン5mg)1回1錠1日1回(朝食後)併用

    Ⅱ.原発性アルドステロン症(PA) (偽性アルドステロン症を含む)

    ▶診断のポイント

    血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC)/血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)比(aldosterone renin ratio:ARR)(pg/mL/ng/mL/時)>200でスクリーニングし,カプトプリル50mgの内服を行い,90分(または60分)後のARR>200(PACの単位がpg/mLの場合,ng/dLの場合は>20),または生理食塩水2Lを4時間かけて点滴静注し,安静臥位または坐位で採血,負荷後のPAC>60pg/mL(6ng/dL)なら原発性アルドステロン症(PA)と診断する。PAは同じ血圧の本態性高血圧症に比較して,心血管合併症(心筋梗塞,脳卒中,心房細動等の不整脈や心不全)と腎障害の相対リスクが高いので注意する。PAC>200pg/mL,PRA<0.5ng/mL/時かつ血清カリウム<3.5mEq/Lの低カリウム血症を伴う場合は,手術適応のアルドステロン産生腺腫である可能性が高い。手術を希望する場合は,造影CT(副腎腫瘍とともに副腎静脈も描出する),副腎静脈サンプリング(AVS)を行い,AVSでの局在診断にて片側病変なら,腹腔鏡視下片側副腎摘出術を行う。手術を望まない場合や手術適応のない両側過形成病変ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRB)を含む降圧治療を行う。

    偽性アルドステロン症については,わが国の場合は,肝障害でグリチルリチン製剤の長期投与か,漢方薬成分の甘草の長期摂取による症例が大部分を占める。血圧の上昇と低カリウム血症を呈する。ほとんどの場合,低レニン・低アルドステロン血症となる。甘草を含む漢方薬を直ちに中止し,MRBを含む降圧薬を投与する。通常1~3カ月で薬物治療が必要なくなるが,本態性高血圧症が合併する場合,必要に応じて降圧薬は継続する。

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